元キーエンスNo.1営業が斬る
「最悪なプレゼン」とは?

 まさしく“最強企業”といえるキーエンスで、杉谷氏が学んだのは「売れている営業担当者は聞き上手」ということだ。

「売れている人はプレゼンを15分以内に簡潔にまとめて、終了後に質問するんです。『お客さんの状況を教えていただくために今日は来ました』と。その姿勢が、成果を出す上で非常に重要だと思います。

 商談相手が無口かおしゃべりかを問わず、人間には『話したい』という根源的な欲求があるはず。だからこそ相手にも話してもらう場をつくり、顧客のニーズを聞き出すことが大切です。プレゼンはあくまで『前説』や『お土産』という位置付けであるべきだといえます」(杉谷氏、以下同)

 言い換えると「自社の商品・サービスを知ってほしい・買ってほしい」という思いを前面に押し出し、一方的に話し続ける営業担当者は二流。プレゼンを布石とした双方向のやりとりによって、顧客が求めているものを聞き出せる営業担当者は一流ということなのだろう。

「話すのが上手で、ロールプレイやプレゼン、デモンストレーションもうまい。それでも売れないという人は、やっぱり聞くのが下手なんですよね」

 そして杉谷氏は“日本企業あるある”として、受注につながらない「最悪なプレゼン」の流れは次のようなものだと斬り捨てる。

「15~20ページに及ぶスライドを用意して、1枚当たり2~3分かけて話をした後、『ご清聴ありがとうございました』と説明を終える。そうしたプレゼンの後、『ご質問がもしあればお願いいたします』と呼びかけるが、先方はシーンと静まり返っている。

 取引先のちょっと気遣いができる人や偉い人が『一つ質問していいですか』と沈黙を破るも、あまり練られた質問ではないので盛り上がらない。

 そして最後に、営業担当者が『ありがとうございます。じゃあまた何かありましたら、よろしくお願いいたします』と締める。これはよくある一番悪いプレゼンです」