「ミラティブは、ゲーム実況の配信数と配信者数を成長の指標として追っていました。極論を言えば、実況を見る人は(広告で)集めることはできます。ですが、同じように配信者を集めるのは難しい。ですから、配信者さえ積み上げればサービスは成長すると思っていました」
成長を確信したのは、ミラティブがiPhoneでの配信に対応したタイミングだ。ミラティブのすべての機能を利用したければ、スマホ画面の共有機能は必須だ。当時、Androidではその機能が利用できたが、iPhoneでは利用できなかった。
だが2017年に入ってiPhoneでも画面共有が可能になり、9月から配信機能に対応。これで配信者数が一気に伸びはじめた。覚悟を決めた赤川氏は自ら会社を立ち上げ、ベンチャーキャピタル(VC)のグロービス・キャピタル・パートナーズ、伊藤忠テクノロジーズベンチャーズ、ANRIのほか、個人投資家から10億円以上の資金を調達。その資金でミラティブの事業を譲受した。
ユーザーの5人に1人が“配信者”
現在のミラティブの配信者数は月間100万人を超える。自社調べでは、国内最大の配信者数を誇る。配信者の比率は全ユーザーの20%ほどだ。5人に1人のユーザーが自らのゲームプレイを配信をする理由について、赤川氏は「『楽しい』という気持ちをユーザーが共有しているから」だと分析する。
「いいか悪いかという話ではなく、(動画配信サービスの)SHOWROOMなどが立ち上がり、『配信は稼げる』という認識が広がりました。その結果、芸能人やアイドルなどが参入し、視聴者からギフトを受け取るという、ビジネスとしての配信が多くなっていきました」
「一方でミラティブのユーザーは『ただ楽しいから』と配信をします。たとえば遊園地に行ったとき、みんなで写真を撮ってそれをSNSにアップしますよね。『楽しいことがあったらソーシャルメディアで報告』という考えはゲームでも同じです。ガチャを回して、レアキャラが出たらTwitterにそのスクリーンショットをアップします。そういう人は、ミラティブでガチャを回すところを実況して、視聴者と気持ちを共有しています。よく『友達の家でドラクエやってる感じ』と説明するのですが、心理的な配信のしやすさを考えています」
配信のハードルを下げるアバター機能
赤川氏が言う配信のしやすさに一役買っているのが、「エモモ」と呼ぶアバター機能だ。配信者は自らの顔を出すことなく、VTuber(バーチャルYouTuber)のようなアバターを操作して、視聴者とやりとりができる。この機能はベータ版を公開してからまだ半年ほどだが、すでに数十万人の配信者が利用している。