“浜ちゃん”起用CMでブランドイメージの転換図る

 2017年から年に一度のペースで新型マッスルスーツを発売していたイノフィスだが、2019年に発売したEveryは1カ月あたり約2000台のペースで出荷されている。1カ月20台程度の出荷ペースだった初期モデルと比べると、大幅な拡大だ。

 最大の理由は、低価格化だ。Everyの基本構造は既存モデルと同じだが、これまでアルミだったボディ部分を樹脂による一体整形にすることで部品点数を減らし、生産コストを大幅に削減したという。前述の通りEveryの価格は15万円以下で、前年発売のモデルと比べると約7割も安くなっている。

 Everyの販売開始に合わせて、芸人のダウンタウン・浜田雅功さんを起用したテレビコマーシャルでのプロモーションも行い、マスへのリーチを狙った施策を展開しているイノフィス。古川氏は、「これまでのヒアリングに基づき、標準的なPCくらいの値段になれば一気に普及すると見込んだ戦略だ」と説明する。

浜田雅功さんが出演するCM画像。マッスルスーツを着た浜田さんが次々と”いいこと”をしていく 提供:イノフィス浜田雅功さんが出演するCM画像。マッスルスーツを着た浜田さんが次々と“いいこと”をしていく 提供:イノフィス

 マスへのプロモーションの際に意識したのは認知度向上ではなく、マッスルスーツを着用する人のイメージ向上だという。テレビコマーシャルでは機能の説明などは一切なく、マッスルスーツを着て“いい人”になった浜田氏が次々と人助けをするストーリーが展開される。

「営業で現場の方にお話を伺っていると、『マッスルスーツを着けると馬鹿にされる』という声がよく出ました。腕っぷしが強い人たちが集まる環境で、『マッスルスーツ=弱い人が着るもの』というイメージが形成されていたんです。そうではなく、マッスルスーツは人を助ける“いい人”が着るものだと思ってほしい。低価格化とコマーシャルで、マッスルスーツが人手不足で困っているあらゆる現場で選択肢になれば」(古川氏)

潜在需要は全世界の腰痛に悩む人々、コロナ禍も好機に

 新型コロナウィルスが猛威を振るう中でも、「マッスルスーツ市場に大きな影響はない」と古川氏。むしろ、海外からの実習生が入国できなくなったことで、既存のメンバーで重作業をしなければならず、ニーズが高まっている場所もあるくらいだという。

 今後は国内だけでなく、海外展開も見据えた生産体制を整備していく。また、まだ詳細は明かせないが医療分野での新製品も開発中だという。

「全世界の腰痛に悩む人々が、マッスルスーツの潜在顧客です。腰に何らかの痛みを抱えている人は、日本では全人口の4分の1にあたる約2800万人。こうした人々の日常生活を少しでも楽にすることが、私たちの願いです」(古川氏)