このほか、Wi-Fiは最新規格のWi-Fi 6に対応。モバイル通信も最新の5G規格は非対応となっているももの、4G LTEでは1Gbpsを超える高速な通信をサポートする。もちろん、Suicaを含むApple Payも利用可能だ。
見た目はiPhone 8とほぼ変わらず、機能も目を引くものは少なく、パッとしない製品に見えるかもしれない。しかし中身は税抜7万円台からの最新のiPhone 11にほぼ準じるもので、iPhone 8から比べると2世代分の性能向上が反映されている。
“中身だけ最新”の理由とiPhoneに吹き荒れる逆風
この“中身だけ最新”のiPhone SEには、アップルがここ2〜3年で進めてきた戦略転換が色濃く反映されている。
13年前の2007年、スティーブ・ジョブズ氏が初代iPhoneを発表して以来、iPhoneはアップルを象徴する製品となった。当時はタッチパネルだけで操作する一風変わった携帯電話を受け入れるかどうか、多くの人の議論の的になったが、2020年現在、iPhoneとAndroidという2大スマートフォンOSが携帯電話市場のほとんどを占めるに至った。
携帯電話市場そのものを作り変えてしまい、いまや携帯電話といえば真っ先に思い浮かべるのはスマートフォンという世界を実現するにまでなっている。
この間、アップルはスマートフォンのハードウェア、つまりiPhoneを自社開発の高性能モデルに限定し、OS(iPhone OS/iOS)、アプリストア(App Store)と一気通貫で展開する戦略により、スマホ市場でもっとも利益を上げる企業となった。
一方で、ここ2〜3年はスマホの技術も成熟し、5万円以下の手頃なAndroidスマートフォンも多く登場している。そして、それら低価格なAndroidスマホでも、10万円を超える高価なスマホと性能差を感じるシーンは少なくなってきている。そして高価なモデルではとくに、買い替えサイクルが長期化する傾向も見られる。以前はスマホを2年前ごとに買い替えていたという人も、今のスマホは3〜4年使えそうという実感もあるだろう。
もとより高価格帯に絞ってきたアップルは、スマホの販売数で他社に追い上げられている。アップルはスマホ出荷数で長年、韓国サムスン電子に次ぐ2位に位置していたが、2019年には中国ファーウェイにその座を奪われている。
つまり、アップルの得意とする高価格帯の市場は、スマホ性能の進化によってより強い逆風が吹いている状況といえる。