通常、携帯電話キャリアとそこに製品を納入するスマートフォンメーカーでは、前者の立場が強く、メーカーの提案する製品を携帯キャリアが納入されることになる。その力関係はアップルと携帯キャリアの間では逆転している。

 iPhoneを取り扱う携帯キャリアには、iPhone納入の条件として、携帯キャリアが具体的な販売目標を設定される場合もある。アップルが制作したCMも携帯キャリアの出資により放映され、iPhoneを取り扱う店舗では、展示機を並べ方やiPhone用に確保する売場面積に至るまで指定される場合もある。携帯キャリアはそうした不利な条件を呑んでまでiPhoneを導入し、販売してきた経緯がある。

 そして今回のiPhone SEは、ちょうど「iPhone 8」が在庫処分の時期に差し掛かったところで登場した。しかもこの新製品のアップルによる直販価格は、iPhone 8の携帯キャリア3社による販売価格(6万円前後)よりも低価格に設定されている。

 新型iPhone SEの発売後、性能が大きく劣るiPhone 8の在庫は価格を下げて販売せざるを得なくなるだろう。

 この価格設定を巡る携帯キャリアの苦悩は、すでに公表されているソフトバンクの新型iPhone SEの価格からも推察される。もっとも低価格な64GB版でも税込5万7600円と、Apple直販のSIMフリー版よりを8000円ほど上回る価格設定になっているのだ。若干高めの価格設定にすることで、携帯キャリアの利益も確保しつつ、iPhone 8の在庫を売り抜く戦略を考えているのだろう。