iPhone/iPadシリーズは2019年時点で累計20億台の出荷を記録している。古くなった製品には買い替え需要が発生するとはいえ、高価格帯のモデルだけでこれまで以上に収益を伸ばすのは困難だろう。
“スマホ本体で稼ぐ”から転換したアップル
そこでアップルは、スマートフォン単体で収益を取る戦略から、周辺機器や関連サービスからの収益を重視する方針に軸足を移しつつある。
アップルの近年の決算資料を見ると、気付くことがある。iPhone本体の売上高は年によって上下しているが、サービス収入や周辺機器の売り上げが勢いよく伸びているのだ。たとえば2019年通年の決算では、iPhoneシリーズの売上高は1423億ドルで前年度の1648億ドルから225億ドル減らしている。
一方で「サービス」部門の業績は462億ドルで、前年度の397億ドルから大きく伸ばしている。また、ワイヤレスイヤホンのAirPodsなどが含まれる「ワイヤレス、ホーム、アクセサリー」部門は、244億ドルでこちらも前年度の173億ドルから伸張している。両部門ともアップルの売り上げ全体に占める割合は高くはないものの、伸びしろが大きく、アップルにとっても注力分野とみなされているようだ。
iPhoneにおける「サービス」といえば、App Storeがその筆頭にあげられるだろう。iPhoneで動くアプリを独占的に配信するApp Storeでは、売り上げの30%がアップルの収入となる。また、手数料収入の面では決済サービスApple Payも注力分野となっている。昨年アップルはiPhoneと連携するクレジットカード「Apple Card」を米国向けに導入し、決済分野での存在感を高めている。
さらに、アップルは、iPhone上での“体験”も自前のサービスでまかなうための準備を進めてきた。音楽聞き放題サービス「Apple Music」、独自制作の動画見放題サービス「Apple TV+」、ゲーム遊び放題サービス「Apple Arcade」、ニュース・雑誌配信サービス「Apple News+」(日本未展開)と、サブスクリプション型(月額課金制)の見放題コンテンツサービスをここ数年で立て続けに展開している。特にApple TV+やApple Arcadeは、すべてのコンテンツがアップル独占配信という力の入れようだ。
また、周辺機器ではオーディオブランドのBeatsを傘下に加え、ワイヤレスイヤホンのAirPodsシリーズを投入している。AirPodsはiPhoneに近づけると自動で接続するなど、 iPhoneと組み合わせたときの使用感を高めるように設計されている。イヤホン1つとってもiPhoneを中核としたエコシステムの一環となっているというわけだ。