GMOインターネットグループ(GMO)は、熊谷代表のTweetから2日後の4月17日には顧客が手続きする際の印鑑完全廃止と、取引先との契約を電子契約のみとすることを表明。また同グループのGMOクラウドが提供する「GMO電子契約サービス Agree(以下Agree)」のStandardプランを1年間無償で提供することも明らかにした。

 GMOは1月26日、全グループ4000人のパートナー(従業員)の在宅勤務をいち早く指示しており、定時株主総会の省力化開催など、感染拡大への取り組みを早期から積極的に行っている。

 GMOインターネット会長兼社長の熊谷正寿氏は、今回の表明について、その理由を2つ挙げる。1つは在宅勤務ではどうしてもできない、郵便と捺印業務への対策だ。3カ月前から在宅勤務を開始している同社でも、この2点だけは出社して処理をせざるを得ない業務だ。緊急事態宣言が出ても、どうしても紙の請求書が必要というクライアントもいる。

「私は今の状況を、ただの通勤ではなく『コロナ捺印痛勤(つうきん)』と呼んでいる。痛勤をせざるを得ないパートナー(同社では社員をパートナーと呼ぶ)を守るために何かできないかと思っていた」(熊谷氏)

 また同時に、熊谷氏自身も捺印作業には多くの時間を割いている。これを電子化することは、電子契約サービスの提供者としての立場だけでなく、結果として世の中のためになると判断したと説明する。実際電子契約サービスへのニーズは高まっており、GMOクラウド ソリューション事業部 電子契約サービス推進室の室長、牛島直紀氏によると、Agreeについては3月の新規申し込みは前年比で2倍、契約の結ばれた件数は四半期比(2019年10〜12月と2020年1〜3月の比較)で1.6倍に増加しているという。

 前述の熊谷氏のツイートへのいいねやリツイートといった反応は200万件以上とSNS上で大きな反響があった。だが竹本IT相の発言に対しては、感情的に反応した意図はまったくないと熊谷氏は話す。

「(140字の制限のある)ツイートでは分からないが、大臣の発言は(はんこ廃止の)『きっかけ』というよりは『気づき』を頂いたと思っている。パートナーが“痛勤”していることに対する問題意識は以前から持っていた。また、GMOは自社に電子契約のプロダクトを持っているので、以前からやっていきたかったことだ」(熊谷氏)