自分で作って確信した「アプリ」によるスマホ革命
App Storeが始まったばかりの2010年、当時ヤフーの社員だった庵原氏は、同僚でのちにヤプリ取締役CTOとなる佐野将史氏と、趣味でスノーボードのハウツーアプリを制作した。アプリは、モーションセンサーを使うことで、画面を横に傾けるだけで動画を再生するというもの。スキー場でリフトに乗りながら視聴する際も、グローブを外さずに動画が楽しめるための仕掛けだった。
「完成したアプリを見たとき、“ネットとフィジカルが融合する新しい時代がくる”と直感しました。スマホによる革命を、アプリが牽引すると確信したんです。のちに一世を風靡した、AR(拡張現実)を使った『ポケモンGO』やGPSを使った『Uber』は、アプリが起こした革命の最たるものだと思います」(庵原氏)
アプリの経済圏が広がるのであれば、その開発ニーズも高まる。複雑なプログラミングをしなくてもアプリを開発できる環境を提供することが、ビジネスになるのではないか。そう考えた庵原氏は、佐野氏と、同じく同僚だった(現ヤプリ取締役の)黒田真澄氏に声をかけた。2011年から、終業後のプロジェクトとしてヤプリの開発を開始した。会社員と並行しての開発は想像以上に困難を極め、丸2年かけてプロダクトを完成させると同時に、2013年4月にヤプリを創業した。
「(アプリを)簡単に作れるだけではダメで、根底にあるユーザーの課題感に寄り添わなければいけなかったんです」(庵原氏) リリース当初にユーザーとして想定していたのは、個人事業主や中小企業だ。低価格で提供することで、エンジニアがいない会社のアプリ開発ニーズを捉えようとした。しかし、オンラインでの販売のみだったこともあり導入数は少なく、思うように売り上げが伸びない日々が続いた。
創業からおよそ2年で、セールス対象をECで課題を持つような法人に切り替えた。さらに、オンライン販売だけに頼った受け身な営業体制を一新し、庵原氏自ら法人へのセールスを開始した。
アパレル企業のマーケティングで手応え
積極的に法人営業を開始して最初に導入が決まったのは、アダストリアやバロックジャパンなどの大手アパレルメーカーだった。アパレルメーカーはこれまで、ファッションブランドごとにECサイトを運営していたが、ヤプリを使って自社アプリを開発することで、アプリからECサイトで商品を購入するまでの導線ができる。アプリのプッシュ通知やクーポン機能などを利用すれば、ブランドのファンとの接点が増えてロイヤリティも格段にあがる。