こうした乗り心地を実現するために、LOMの開発には2年以上の構想期間を費やしている。既存モビリティの研究を重ね、10台近くの開発案が検討された結果、実現したのが現在の形状だという。

「開発時には、『キックボードのような体の軸を使った旋回』『マウンテンバイクのようなオフロードで対応』『スケートボードのような安定したステップの乗り心地』など、あらゆるモビリティの乗車体験を抽出しました。LOMは、それら全てを実現できるように目指したプロダクトです」(glafit代表取締役社長の鳴海禎造氏)

「次世代を代表するモビリティづくり」
その第一歩としての電動バイク

 glafitの創業は2017年。ペダルを漕いで走行する「自転車モード」と電動バッテリーで走行する「バイクモード」を搭載した電動ハイブリッドバイク「GFR-01(以下、GFR)」がクラウドファンディングサービスでヒットして話題になった和歌山県発のベンチャーだ。

 だが、彼らは初めから電動バイクを開発していたわけではない。鳴海氏が最初に立ち上げた企業は、和歌山県でカー用品を販売するFINE TRADING JAPAN。同社のオリジナル製品ブランドの名前がglafitだった。ブランド設立にあたり、鳴海氏は「次の世代を代表するモビリティをつくる存在になること」というビジョンを打ち出した。

「もちろん、私たちのような小さな組織がすぐにこのビジョンを実現するのは不可能でしょう。ですが、これからは電気自動車の普及などでモビリティのあり方が大きく変わり、業界構造も再編されるはず。いまから未来を見据えたモビリティを開発していけば、長期的には壮大なビジョンも実現できると考えています」(鳴海氏)

 その足がかりとして開発されたのが、GFRだ。冒頭にもあるとおり、2017年に開始したクラウドファンディングでは1億2800万円を集め、当時の支援販売額日本一を記録。その後はオートバックスなどでの一般販売も開始し、すでに5000台以上を売り上げている。

 鳴海氏はGFRのヒットを機にglafitを分社化し、2019年にはヤマハ発動機などから資金調達も実施し、現在に至る。LOMは、そんなglafitが展開する2台目のモビリティだ。今後はGFRとの併売を行う。

「LOMはGFRの後継機種ではなく、モビリティのバリエーションを広げる製品です。1つ1つの製品が、私たちのビジョンを実現するための歩みだと思っています」(鳴海氏)

 筆者はLOMとあわせて製品版のGFRも試乗している。GFRが自転車の延長線上にある“普段使い”のモビリティであるのに対して、LOMはその爽快感や体感スピードから “レジャー”用という印象が強い。こういったさまざまな性質のモビリティを提供することで、ビジョンの実現を目指すのだという。