「宿泊客にとっても面倒くさいことだらけのホテル体験を、全部解決したい」という濱渦氏は、「我々は会員登録の必要もなくす」と述べている。
「今後プラットフォーマーのあり方は変わってくると考えている。今までのプラットフォーマーの強みは、集客力と個人情報を持っていることだった。しかし、ECの世界でも(楽天やAmazonといったプラットフォーマーではなく、自分でネットショップが作れる)ShopifyやSTORES.jpといったサービスが広がっている。これは、集客はSNSに取って代わられ、個人情報の保持はAppleやGoogleへとレイヤーが移っているためだ」(濱渦氏)
NOT A HOTELでは、「Apple IDなどがあれば、個人情報を毎回打つ必要なく、そのまま手続きが進められるようにする」という。「そういう点でもユーザー体験はだいぶ変わってくるのではないか」と濱渦氏は語る。
D2Cの考え方が
これまでにないホテルを生む
ソフトウェアの部分だけでなく、設備などハード面でも「これまでにないホテルを、D2Cの考え方で作っていきたい」と濱渦氏は語る。
「我々は共用部をできるだけ作らない。従来のホテルの設備投資では共用部に半分ぐらいが使われていて、その分、部屋がすごく狭いことがある。部屋しか作らなければコストパフォーマンスはよくなる。アパレルD2Cでも、中間コストを省いた分、いい生地を使うことができて、これまでの倍ぐらいの品質のものが提供できる。我々はホテルでそれをやろうとしている」(濱渦氏)
「これまでのラグジュアリーホテルと価値観が違うやり方で、家のように使えるようなホテルを作る」と濱渦氏は述べ、「今後1年ぐらいかけて、他社がマネできないぐらいの規模感で、システムもホテルも開発していく」と話している。
第1弾として、前述したように宮崎県・青島でフラッグシップとなるホテルを開発中。2021年9月の開業を予定している。また、都心部でもミレニアル世代に向けた、新しいデザインのホテルを開発する予定だという。
直営のフラッグシップ以外では先に述べたように、基本的には自社でアセットを持たずにブランド展開を図ろうとしているNOT A HOTEL。直営以外のモデルには、不動産のみをオーナーから賃貸借契約するリース方式、運営委託契約を結び、NOT A HOTELがオーナーから運営委託手数料を得る運営代行方式、ブランド予約インフラの部分をNOT A HOTELが担い、サービス提供からオーナーが行うフランチャイズ方式の3パターンを取り入れる予定だ。