濱渦氏は「システムを提供するSaaSとして、より多くのホテルにサービスを提供していきたい」という。
「10年後には大手ホテルチェーンなども含め、国内のほとんどのホテルでNOT A HOTELの仕組みが動いているぐらいの状況を目指したい。本気で観光業、ホテル業界のDXをやるなら、それぐらい使ってもらわなければと考えている」(濱渦氏)
約10億円の資金調達も完了
狙うはハイエンド層
NOT A HOTELでは、すでに10億円近い資金調達を完了している。シード投資を行ったのは、VCのANRI、SMBCベンチャーキャピタル、GMO VenturePartnersと個人投資家らだ。マーケットとしては「21世紀最大の産業になる」といわれる観光業界だが、「VCや銀行からは、同じ規模でチャレンジするスタートアップはいないと聞く。これから伸びる産業の割には、まだ参入が少ない」と濱渦氏は言う。
「住宅とホテルのマーケットの境界線は、あいまいになっていく」と考えている濱渦氏。「この境界が溶けたとき、ものすごく大きなマーケットになるだろう。そこにフィットしたテクノロジーやハードを備えたホテルがあれば、大きなマーケットの中で成長性もあり、面白いことができるだろう」と述べている。
「軽井沢など、東京から近いエリアで別荘の需要が今、すごく上がっているようだ。(コロナ禍で)消費のプライオリティーが変わったと感じる。アパレル、雑貨や嗜好品の優先順位が落ちて、その代わりに今後、家や暮らす場所にお金をかけるようになると考えている。そこのニーズをしっかり捉えたホテルを作っていきたい」(濱渦氏)
直近では、定額制の多拠点居住サービス「ADDress(アドレス)」や「HafH(ハフ)」、といったサービスも登場しており、暮らし方の変化はスタートアップでも注目の集まる領域だ。だが濱渦氏は「我々としては、ミレニアル世代の経営者など、よりハイエンド層に向けたブランドを作りたい」と語る。その視線はすでに“スタートアップ”の外の世界を見据えている。