米国でトップクラスのVCに属するキャピタリストは、ポッドキャストやブログ、Twitterなどで積極的に情報発信を行っている。日本でもその流れは確実に来ていると感じた堀氏は、自身もnoteの記事執筆や書籍『STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか』(NewsPicksパブリッシング)の構想を進め、発信強化に努めていた。また、YJキャピタルとしても体質改善を進めてきたという。

「今年は名前と顔を覚えてもらうために『YJキャピタルはどういう会社に投資するVCなのか』、投資戦略と投資領域を今まで以上にはっきりと発信するように変えました」(堀氏)

現在、投資対象としてYJキャピタルが特に注力するのは「メディア」「コマース」「Fintech」の3本柱。特にメディアではVRや音声、コマースではソーシャルコマース、Fintechではアグリゲーション型の金融商品仲介サービス(スマホで保険が買えるInsureTechなど)といった領域を重点投資領域として、各領域担当者のTwitterアカウントとあわせて2020年初に発信した。

「指名を受けるためには、その領域の担当キャピタリストがTwitterやブログなどで日頃の調査結果を情報発信して、勉強会を開催することなどが有効です。これは年初に立てた目標でしたが、コロナの影響で、よりTwitterやブログ、SNSでの情報発信が重要になってきました」(堀氏)

これまでのYJキャピタルの悩みは、キャピタリストを複数抱えているにもかかわらず、堀氏1人だけにスポットが当たる状態だったことだ。

「YJキャピタル、イコール個人名が1人だけという状態は不健全です。各セクターごとのキャピタリストがしっかりと輝いている状況にすべく、この1月から力を入れてずっとやってきたのですが、その結果、コマース領域ではヘイへの投資、メディア・音声領域ではstand.fmへの投資が決まり、Fintech領域でもいま交渉を進めているところ。成果が出始めています」(堀氏)

 

堀氏は、投資領域のアピールだけでなく、YJCキャピタルがCVCだからこその強みも打ち出したいと語る。

「今までは、CVCとしてヤフーやグループ企業との事業提携を強く打ち出すことはしてこなかった。これをもっと分かりやすく打ち出すことによって、起業家から選ばれる存在になっていきたいということは、常々考えていました」(堀氏)