昨年秋からはLINEとの統合の話も挙がっているヤフー、そしてZHD。「超巨大なインターネットカンパニーとして、一休やアスクル、バリューコマース、カービューなど、グループ傘下にはたくさんの企業があります。統合が完了すれば、メディア領域においてLINEというすごいパートナーも将来的に加わってくる。私たちはヤプリやKaizen Platform、Reproをはじめ、エンタープライズSaaSのスタートアップなどにも数多く出資していますが、ZHDグループの企業に営業したいという問い合わせも結構あります」(堀氏)

さらに間口を広げれば、ZHD親会社であるソフトバンクとソフトバンクグループも彼らの後ろ盾となる存在と言える。スタートアップにとって、こうした企業への営業機会はありがたい話だ。実際に、BtoB SaaSスタートアップをグループ企業へ紹介したところ、商談がどんどん決まっていったと堀氏は言う。

「CVCなのに今まで何でちゃんとやってなかったんだと本当なら怒られるところなんですが、今年はそうした活動にも力を入れています」(堀氏)

これらの背景があり、また参画する中核メンバーが自律して活動できる体制が整ってきたこともあって、YJキャピタルが選んだのは、ZHDとの事業シナジーのさらなる加速だ。

YJキャピタルは9月16日、ヤフーをはじめとしたZホールディングスグループ(以下ZHD)の企業とスタートアップとの連携強化を目指すピッチイベント「Zピッチ」をスタート。参加企業の募集も開始した。

若手キャピタリストが輝くには専門性とネットワークが重要

この半年は常に「起業家からどういう存在のVCとして見られたいか、ブランディングを考え、投資戦略を際立たせ、投資した後のグループ会社とのシナジーを分かりやすく伝えるための活動を具現化してきた」と堀氏は振り返る。

人材面では「CVCでは投資経験者をなかなか採用できない」という悩みもあると明かす。

「商社や事業会社の投資部門にいた人がVCに転職するとき、スタートアップを助け、成長したい、キャピタリストとして活躍したいとなったときには、給与だけでなくインセンティブも欲しいと思うんです。そこで経験ある人は、インセンティブのある独立系のVCに流れてしまう。CVCは外部から経験者を採用できないので、未経験者だけで戦うことになります」(堀氏)

YJキャピタル代表取締役社長 堀新一郎氏
YJキャピタル代表取締役社長 堀新一郎氏

数年前から日本でもスタートアップエコシステムができあがり、VCによってシード、アーリー、ミドル、レイターとステージごとに投資対象が分かれるようになった。また対象となるセクターも複雑化して投資領域は拡大し、「1人で何でも全部やるのは限界がある」と堀氏はいう。そこで若くて経験のないキャピタリストが起業家に信頼され、選ばれ、投資機会を得るには、その領域に一番詳しいことが重要だと堀氏は語る。