ユニオンテック代表取締役社長の韓英志氏(提供:ユニオンテック)ユニオンテック代表取締役社長の韓英志氏 写真提供:ユニオンテック

 すでに1万社以上の工務店や専門工事会社が登録しており、基本的なマッチング機能は無料で使用できる。有料プランに加入すればより詳細な企業情報を登録できるようになる。同社の2018年度におけるSUSTINAの売上は約1.3億円。2019年度の売上見込みは3億円以上になるという。

 現場を中心に実作業を展開してきた同社がウェブサービスを始めた理由について韓氏は「建設業界のIT化は非常に遅れており、工務店や職人が自社のホームページを持っていないことすらあります。また、ページを持っていても、保有している職人数や加入している保険といった大事な情報がきちんと掲載されていないことも多い。反社(反社会勢力)との関係性が問題になることも少なくない業界なので、業界関係者の情報を一覧できる場が必要だと考えたんです」と説明する。

 ここで改めて、当初の問いに戻ろう。ユニオンテックは、技術力も確かで震災現場に派遣できるくらいに信頼できる職人を、なぜ迅速に集めることができたのか。

 実は、ユニオンテックでは業界内でのつながりをより強固にするために、SUSTINAに登録しているユーザー同士でのオフラインイベントを定期的に開催している。そこで信頼できると判断した職人には、ユニオンテックの施工を依頼することもあるのだという。

 今回の災害支援では、このメンバーの中から屋根上での仕事を得意とする職人に声をかけている。オンラインがきっかけで出会った職人ではあるが、顔なじみで腕前も確認済みのため、安心して支援を依頼できたわけだ。

「弊社としても実験的な試みでしたが、現時点ではこれまで築いてきたネットワークが実際に活かせることがわかり、手応えを感じています。今後も、サスティナの信頼情報を積極的に拡充していき、受発注の流れをよりスムーズにできれば」(韓氏)

職人ネットワーク、災害復旧に貢献できるか

 今回の支援では、もちろんユニオンテックにとって金銭的なメリットはない。それどころか、1000万円の赤字を出すことになる。その中で支援に乗り出したのは、自社が築いてきた職人のネットワークを活用して災害の現場への支援に貢献できないかと考えたからだ。また、今回のように災害現場で職人が活躍することで、職人に憧れる人が増えればいいと期待を寄せる。

「様々な業界を見ていると、かつては国が担っていた役割を民間企業がこなしているケースが増えています。官民の連携が課題となる災害支援ですが、意思決定スピードの速い民間企業だからこそできることはまだまだあるはず。実験段階ですが、そうしたケースの1つになればと思い、支援に踏み切りました。