パネルディスカッションのなかで武藤氏は「出前の文化が昔から根付いている日本だが、そこにはさまざまな制約があった」と、次のように指摘している。
「日本全体で飲食店は約60万店。しかし、そのなかで出前を行っているお店は3万店ほどでしかありません。人材の確保が難しく、出前をしたくてもできない。あるいは、かつて出前をしていたけれど、もう人を抱えられなくなって出前をやめざるを得なくなったというお店もあります。ようするに、配達人を自前で抱えておくのが前提だったゆえに出前ができなくなっているわけです」
デリバリーで来店客は減らない、追加売り上げになる
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Uber Eatsは、その母体でもある配車サービスUberの仕組みを活用することで、自転車やバイクに乗った「配達バートナー」を街中に配置し、いつ・どこで発生するか分からない飲食ニーズと飲食店、そしてそれらを効率よく繋ぐ配達パートナーをマッチングすることで「配達人不足」を解消。出前をしたくてもできないという飲食店の制約をクリアしたばかりか、新たな出前需要を掘り起こすことにも繋がったと説明する。
「登録店舗のなかには、いままでの来店客が出前を取るようになって、結局は売り上げが伸びないのではないかという不安を持つ飲食店さんが少なくありません。しかし実際には、デリバリーが追加売り上げになっています」
Uber Eatsのユーザーは「いわゆる『おひとりさま』が大多数」だが、その一方で、これまで出前を取ることが少なかった「ファミリー層やパーティの需要が伸びている」と武藤氏は言う。
「これまで飲食店の売り上げは、テーブルや椅子の数、営業時間が”キャップ”になっていました。いくら売り上げを増やそうとしても、こうしたキャップを超えることは不可能だったんです。デリバリーは、これらの制約を取り払うことができます。それこそが飲食店の機能拡張ということだと思います」
たしかにデリバリーだと、店内が満席でも出前注文は受けられる。中食市場の拡大に伴って拡大しつつある「おひとりさま需要」はもちろん、パーティ需要などさまざまな出前ニーズに対応することができるため、単純に売り上げが上乗せされるということだ。
サービス設計面では、ユーザーの利便性がクローズアップされているが、飲食店サイドにとっても「シンプルで簡単」なことにこだわるだけではなく、おいしい料理を提供したいという飲食店の「思い」にも応えられるような設計を心がけているという。