腕時計のECというアイデアの次に決めなければならなかったのは、時計のデザインだった。最初から世界展開を見据えていたからこそ、デザイナーは北欧を代表するような人物でなければならないと2人は考えた。

「ヤコブ氏のように世界で活躍するデザイナーを起用している北欧の腕時計ブランドは極めて少なく、その点もチャンスだと思いました。最終的に5名ほどの有名デザイナーと面談をしましたが、ヤコブ氏ほど親和性が高い人はいなかった。彼は、サステナブルをミッションに掲げた企業にしか協力したくないとの強い意思を持っていました」(パスカー氏)

 必要な人材がそろいプロダクトを作り始める段階で彼らが次に行ったのが、アメリカのクラウドファンディングサービス「Kickstarter(キックスターター)」で全世界に呼びかけをすることだった。目的は「商品の反応をテストすること」「投資を得ること」の2つ。結果的に、彼らの予想を上回る世界88カ国から約2400万円の資金が集まった。

 知人や友人が多いデンマークからの反響が中心だったものの、日本を含めたアジアからも一定額の支援があり、このクラウドファンディングの成功が世界進出への足がかりになったことは言うまでもまない。彼らは、創業間もない2018年から7カ国語でウェブサイトを展開し、100カ国でのオンライン販売を開始した。

「クラウドファンディングの反応に歓喜したものの、その時点では100カ国への販売がどれほど大変なことかを理解していませんでした。ウェブサイトの多言語対応に四苦八苦したり、各国の物流体制を整えるために提携先を探し回ったり、数えきれない苦労がありました。しかし、悲観的になることはなく事実として冷静に受け止め、これらの失敗を学びのチャンスに変えてきました」(パスカー氏)

SNSマーケティングで認知拡大

 親和性が高いと確信していた日本へのアプローチとして彼らが取った手法は、ウェブメディアでのPR記事やアフィリエイト、そしてSNSを使ったインフルエンサーマーケティングだ。創業3カ月で日本人スタッフを雇用し、日本人の視点で“ブランド”と“顧客”の架け橋となるようなインフルエンサーを見つけ出し、じわじわと認知を拡大してきた。

「依頼したのはファッションやインテリアに強いインフルエンサーが中心ですが、それだけではなく弊社のメッセージに共感して広めてくれるようなイラストレーターや料理家の方にもPRをしていただきました。さまざまなジャンルの方に依頼することで、インフルエンサーの個性を活かしたPR戦略を取っています」(パスカー氏)