シルクスナックは、蚕を使わない既存のパスタスナックとの違いがほとんどない商品だ。パスタスナックに蚕の粉末を10%程度練り込んだもの。軽い塩味もあっていくらでも食べることができる。こちらの価格は600円となっている。

 シルクフードラボの営業時間は平日休日ともに9時30分~20時までで、3月末まで営業を続ける予定(営業期間は延長の可能性あり)。また、営業資金を募るクラウドファンディングを近日中に実施する予定だ。

世界的なタンパク質危機見据えて蚕で起業

エリー代表取締役の梶栗隆弘氏エリー代表取締役の梶栗隆弘氏

 エリーは、持続可能な食を探究するために蚕を使った「シルクフード」を開発する2018年創業のスタートアップ。京都大学イノベーション事業化プログラムで最優秀賞を受賞した際のアイデアをもとに創業しており、現在シードステージの資金調達を進めている段階だ。伊藤忠商事やキリン、大正製薬などのアクセラレータプログラムにも参加している。

 彼らがシルクフードを開発する背景には、世界的な「タンパク質危機」がある。これは世界的な人口増加や乱獲により、全人口に対して安定的な食料の供給が難しくなるとされる問題。特にこれからは穀物や植物を中心とした食事から、肉や魚を中心とした食事が基本の中流層以上の人口が増えるため、動物性タンパク質の摂取が難しくなるといわれている。

「2025年から30年頃には食糧の需給バランスが逆転し、供給量が足りなくなるといわれています。現在の日本ではあまり実感しづらいですが、アメリカのBeyond MeatやImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)などの人工肉は、すでに大手スーパーマーケットやハンバーガーチェーンにも並んでいます」(梶栗氏)

 前述の人工肉は豆類などを原料にしたものだが、2013年には国際連合食料産業機関(FAO)が昆虫食を推奨する声明を発表して以降、昆虫食スタートアップも増えつつある。日本でも、京都に拠点を置くスタートアップのBugMoが「コオロギバー」を販売しているが、知名度は決して高くない。そんな昆虫食の中でエリーが蚕に注目した理由は、日本人が長らく関わってきたという歴史があるからだ。

「牛や魚に比べて水や餌などの資源をあまり使わずに飼育できるのが昆虫食の大きなメリットですが、中でも蚕はすでに飼育技術が確立されている珍しい昆虫です。特に日本人は、江戸時代には農家の約3分の1が蚕を育てていたこともあるほど親しんでおり、育成のノウハウを蓄積しています。5~10年で一般的な牛肉よりも安く市場販売できる見込みです」(梶栗氏)