何年先になるかは分からないが、将来、人類はオートフォーカス付きの眼鏡をかけるのが普通になるのかもしれない。そんな未来を予感させてくれるのが、オートフォーカスアイウエアの「ViXion01」(ヴィクシオンゼロワン)だ。今はまだ「眼鏡」と呼べるほどの汎用性はないが(なので「アイウエア」と呼んでいる)、それでも必要とする人がいるから届けたいという思いで始めたクラウドファンディングは、4カ月でなんと4億円を達成。高く評価され、日本科学未来館の「老いパーク」で常設展示が始まった。そもそも“オートフォーカスのアイウエア”とは何か、どういう人にとって役立つものなのか。そのあたりをひもといていこう。(ライター 荻窪 圭)
なぜ老眼になると、
眼鏡をかけたり外したりするようになるのか
近視や遠視や老眼の人は日々実感していると思うが、特定の距離より近いものを見たり、遠いものを見たりすると、目のピントが合わず、クッキリと見えない。年を取ると、どんどんピントの合う範囲が狭くなる。
人間の目でレンズの役割をする水晶体とそれを調節する毛様体筋(これがピント調節を行う)がうまく働かなかったり、水晶体と網膜の距離が長くなって焦点が合わなくなったりしているからだ。
例えば、近視は眼鏡やコンタクトレンズである程度補正できる(遠くにもピントが合うようにする)が、これは補正しているだけで、目のピント調節機構の負担を減らすわけではない。
人間の目のレンズに当たるのが「水晶体」。毛様体筋が水晶体を動かして厚さを変えることにより、遠くにも近くにもピントが合う(提供:ViXion)拡大画像表示
さらに「近視+老眼」になるとどうなるか。自分の目は近視なので「近くが見えるが遠くは見えない」ため、眼鏡をかけることで「遠くも見える」状態に矯正する。若いうちはこれで近くも遠くも見えるが、老眼になってくると、この調節機能がうまく働かなくなってくる。そのため、「遠くのものを見るときは眼鏡で見て、近くのものを見るときは眼鏡を外す」「(本来近距離で見るような小さな文字などを)自分の目から遠ざけて見る」という状況に陥るわけだ。
アイウエアにオートフォーカス機構があれば、
ピント調節問題を解決できる
このピント調節機能を、眼鏡やアイウエア側に持たせることができれば、毛様体筋や水晶体に負担をかけることがなくなり、裸眼ではボケてしまっていた遠景や近距離にもピントを合わせることができることになる。
もし、アイウエア側を完全にオートフォーカスにしてしまえば、肉眼のピント調節機構に負担をかけることなく、近くも遠くも見ることができる――それを目指すのがViXion01なのだ。