国有財産の売却手続きは公正だったのだろうか――。

 メディアで連日大きく報じられ、騒ぎは大きくなる一方だ。それにもかかわらず、「かんぽの宿」をオリックスグループに売却しようとした問題に関して、日本郵政は一向に、積極的に説明責任を果たす姿勢をみせない。あえて言えば、西川善文日本郵政社長は、自前の委員会を作り、手続きが公正だったと証明してもらう考えを示唆しただけだ。お手盛りが懸念されているのに、お手盛りの委員会を作っても疑問を晴らせる道理はない。

 いや、疑問が晴れるどころか、逆に広がる様相も呈している。ここへきて、日本郵政の資産賃貸や事業提携にも問題があったのではないか、との見方が浮上してきたからだ。驚くべきことだが、関係者の間では、「(郵便貯金事業の一つだった)メルパルク(旧郵便貯金会館)の賃貸を巡って、不透明な入札が存在したのではないか」と疑惑を指摘する声があがっている。昨年8月に正式に公表していた日本通運との間の資本提携についても、かんぽの宿で問題が表面化するきっかけとなった「総務大臣の認可」を避けるために、急遽、スキームを変更したのではないかとの疑いが浮上しているという。

 日本郵政の姿勢に、監督官庁と国会は苛立ちを強める一方だ。鳩山邦夫総務大臣は立入検査に乗り出す構えを見せ、野党も民主党の「次の内閣」で総務大臣となっている原口一博衆議院議員らが中心となって「徹底的に追及する」という。

売却の経緯を頑なに
明かさない日本郵政

 急ごしらえで杜撰なものになった郵政民営化の法制度が原因で、今、日本郵政の情報開示義務はエアポケットに陥っている。実態は政府が100%株式を所有する“国営株式会社”になったに過ぎないにも関わらず、完全な民間企業になったかのように振る舞い、国営時代のくびきから逃れているだけでない。日本郵政クラスの規模を誇る民間上場企業ならば当然の義務となっている、株主への説明責任も果たそうとしていない。

 はっきり言おう。今回の問題は、その不透明さを解明するだけでは不十分だ。経営陣が適正な経営を行い、これまですべての案件で国有財産を適切に活用してきたかの検証と、現行制度の法的、制度的、構造的な欠陥の是正は避けて通れない課題になっている。

 日本郵政自身の議事録を引用しよう。

 西川社長は、1月29日の定例記者会見で、言葉だけみると非常に低い姿勢で「専門家から成る検討委員会を設置いたしまして、このオリックス不動産あて譲渡案はひとまず横におきまして、この問題を原点に立ち戻って、再度検討してまいる所存でございます。で、現在は、委員会の人選等、準備作業を行っている段階でございますが、できるだけ速やかに検討委員会を立ち上げたいと考えております」と発言した。