たとえば、カナダに亡命中の香港のアグネス・チョウ氏(周庭氏)を、教授に招聘できないでしょうか。香港の自由を守るために戦い、投獄されても屈しなかった彼女から学生が学ぶことは多いはずです。日本企業の最大の問題の一つが男女の不平等なのだから、彼女の起用自体が林日大からの象徴的なメッセージとなります。

 台湾のオードリー・タン氏、北欧の女性首相経験者、日本が大好きな経営者・ビル・ゲイツ氏など、日本の良さや改革の方向性についての知見が深い海外の著名人の講座を設けるのもいいでしょう。

 ChatGPTをはじめとするAIを教育の中心に置く文科系学科など、教育者にICT教育を徹底させるのも今後の道です。

 こういう新鮮な大学づくりを目指す一方で、廃部が決まったアメフト部に対しては、アメフトを続けたい学生の他大学への移籍をサポートするなど、細かい気配りも必要です。先日の説明会を見ている限り、学生からの質問を禁じるという体育会系体質は少しも改まっていません。ここにこそ、林理事長の新発想が必要ではないかと思います。

 たとえば、戦火に包まれたウクライナでは、アメリカンフットボールが人気スポーツになりました。ただ廃部にするのではなく、ウクライナチームを招待し合宿所で一緒に練習するなどの施策を講じれば、学生にとっては国際交流の面でも大変良い人生勉強ができるはずです。

 日大には多くの部活が存在します。その財力を活かし、母国でスポーツができないパレスチナやシリアの人々を招き、国際的なスポーツ人を養うのも「日大が変わった」というアピールになり、日本の国際的評価の向上に貢献するはずです。

本当は今までになかった
大学をつくれるはず

 部外者が勝手なことを言いましたが、大学経営は文部科学省の厳しいチェックの下で行わねばなりません。なにしろ私学といえども、経営の4割は助成金に頼るっているのが現状だからです。しかし、林さんの声望と人望があれば、こうしたチェックを沈黙させ、今までの日本になかったような大学がつくれるはずです。

 どうか日大の過去の負債の清算にばかり力を注ぐのではなく、そこには適任者を探して配置し、ご自身は林さんらしい大学つくりをしていただきたいと思っています。

(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)