日大改革の発端は、アメフト部の危険タックル問題でした。理事長就任から1年経ってそこに手を付けていないという発言は、誰もが失望するものでした。
ボタンの掛け違いはその後も続きます。本来は、1回目の記者会見を受けて状況を精査し、第三者委員会の意見を取り入れて、澤田氏や学長の処分という話になれば、林さんが裏できちんと事件をグリップしていると見られたに違いありません。しかしそうはならず、12月に入っても要領を得ない会見が開かれました。
林さんが理事長という役割を生真面目に考えすぎた結果、「林さんのカリスマで記者会見をなんとかしたい」という周囲の目論見に嵌められたのではないかと思います。
林氏が周囲に求められても
できないことはある
次に、林さんに求められてもできないことがあるということを、大学もご本人もわかっていない例についてお話します。
アメフト部の問題に端を発し、田中前理事長の逮捕・退陣に至った日大の独裁体質、パワハラ経営、そしてあまり表には出てきませんが前理事長の反社会勢力との繋がりを全部きれいにするというのが、日大改革の大きな目標でした。そのためには、彼の息がかかった人間の更迭と、田中的パワハラ体質の改善、つまりは人事の大刷新が絶対の目標であったはずです。
田中氏は長期間にわたり大学を支配してきたため、隅々にまで情実関係にある部下が配置されていました。その人々はまだ大学に残っています。彼らをリストラするか、パワハラ的運営を改めさせるのが、改革の具体策です。
しかし、これは林さん一人では絶対にできません。確かに、第三者委員会に久保利英明弁護士を起用するなど、反社会勢力との対決をも意識した意欲は感じられます。しかし、久保利氏は総会屋対策で名を売った人。総会屋が壊滅された現在では一昔前の人と言わざるを得ません。反社会性力と絶縁するには、相当な豪腕が必要です。