成功した例として、プロ野球がダフ屋や私設応援団といった反社会勢力と絶縁したケースを挙げたいと思います。日本プロ野球機構は、コミッショナーとして元東京地検特捜部の熊崎勝彦氏を起用し、ダフ屋問題と全面対決。完全に一掃しました。
熊崎氏は検察時代、金丸信自民党副総裁を逮捕し、大蔵省の過剰接待(俗に言うノーパンしゃぶしゃぶ事件)では大物大蔵官僚を逮捕した人物。峻厳な捜査に対して検察内部に絶対の信頼があり、警察にも言うことを聞かせられる力を持っていました。これくらいの力を持った人間を起用しないと、事態は収拾しないでしょう。弁護士レベルでは、長期にわたるリストラや反パワハラ研修など続けられるはずはありません。
林さんは、側近の理事として精神科医の和田秀樹氏と昭和女子大の熊平美香氏を招きましたが、彼らがこういう対策を行えるとも思えませんし、警察・検察人脈でだれかを引っ張ってこられるとも思えません。
つまり、日大の根本的欠点を改善するためのコマがいないのです。コマがいない林さんに改革を求めても無理でしょう。林さんも、自らのこの欠点はもっと自覚すべきだと思います。
まだ何も進んでいない
「林氏だからできること」
なんだか、林真理子批判ばかり繰り返しているようですが、私は「林さんだからできること」をまだ何もやっていないと思っています。
日大は日本を代表する大学の1つです。しかし、研究や発見で名を成す大学ではありません。日本の社長の出身大学で一番多いのは日大というデータが示す通り、日本の産業界を支える中堅クラスのビジネスパーソンの考えを指導するなど、社会を変える発想を学ぶことができる大学になること――。これが、田中体制からの脱却の大命題です。
そのために必要なのは、パワハラではなく、学生の自由な考えと発想で日本を改革するような人材教育に他なりません。日大が変わった。いや変わっただけでなく、日本社会をリードする思想で教育している。そんな象徴的な講座や教授陣をそろえ、学科や学部を開設することです。
思えば林さんは、就任記者会見で「志望者を多くしたい」と語っていましたが、まだそんな施策にはお目にかかっていません。