関西電力、中部電力、九州電力、中国電力が絡んだとされるカルテル事件では、公正取引委員会が合計約1010億円もの課徴金納付命令を下した。そのうち約275億円の納付命令を受けた中部電力は公取委に対して取り消し訴訟を提起した一方、一部株主は新旧取締役に対して損害賠償を求める株主代表訴訟を起こした。同社は東邦ガスとの間でも、カルテル疑惑がくすぶる。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、訴状や原告への取材を基に同社を巡る株主代表訴訟を掘り下げる。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
一部株主が新旧取締役14人に
376億円の支払いを求める
関西電力が中心となり、中部電力、九州電力、中国電力の各社と結んだとされるカルテル事件。公正取引委員会は3月、関電以外の3社に合計1010億円もの課徴金納付命令を下し、電力業界に大きな衝撃が走った。
事件の“主犯”に認定された関電は、公取委の着手前に事件を真っ先に報告しており、課徴金免除を100%適用された。つまり課徴金はゼロである。4月に公表された電力・ガス取引監視等委員会への報告概要によると、関電は「公正取引委員会による事実認定について、当社は争わない」という姿勢だ。
納得がいかないのが他3社である。課徴金が多い順に中国電707億円、中部電275億円、九電27億円で、3社は相次いで処分の取り消しを求める訴訟を提起した。
一方、中部電の株主4人は10月、現会長の勝野哲氏と現社長の林欣吾氏を含む新旧取締役14人に対し、課徴金相当額に社内調査費用などを加えた376億円を連帯して中部電に支払うよう求める株主代表訴訟を名古屋地方裁判所で起こした。これらの動きとは別に、中部電は東邦ガスとの間でもカルテル疑惑がくすぶり、いまだ公取委の“沙汰待ち”状態にある。
関電との間のカルテル疑惑に関しては、中部電は公取委の処分が出ると直ちに処分取り消しの訴訟を起こすと表明した。このように同社は自信を示しているものの、原告側はどう打ち崩すのか。
さらに中部電は東日本大震災以降に浜岡原子力発電所(静岡県)の再稼働を果たせていない会社にもかかわらず、株主代表訴訟の原告らには“根底のテーマ”として反原発・脱原発があるという。約25年前の対立も尾を引いているというが、どういうことか。