洋上風力活性化へ「海底高圧直流送電」元年となるか!?2024年のエネルギー業界の重要7テーマで重鎮が大予測Photo:PIXTA

2024年のエネルギー業界では、「2035年」が強く意識されるようになる。25年秋に開かれるCOP30(国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議)までに世界各国は、35年の温室効果ガス(GHG)削減目標を明示しなければならないからだ。日本政府も、この日程に合わせて、第7次エネルギー基本計画の策定を急ぐことになる。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、11年後を見据えた7つの重要項目で、24年がどのような位置付けとなるか大胆に予測する。(国際大学学長・大学院国際経営学研究科教授 橘川武郎)

温室効果ガス削減目標
2035年「19年比60%減」

 G7(先進7カ国)首脳会議に先立って2023年4月に札幌で開催されたG7の気候・エネルギー・環境担当大臣会合の共同声明では、35年の温室効果ガス(GHG)排出削減目標について、「19年比60%減」という数値を書き込んだ。

 この数値は、「2030年までにGHG排出量13年比46%削減」という従来の目標に比べて、はるかに厳しいものである。日本の政府・地方自治体・企業は、24年を通じて、この厳しい新目標への対応を迫られることになる。

 エネルギー企業も、もちろん、その例外ではない。

 2035年は、今(24年)から11年後にやって来る。そうであるとすれば、それまでのエネルギー関連施策の中心は、向こう10年間に20兆円の政府補助を呼び水にして130兆円の民間投資を喚起する、つまり合計150兆円の官民投資を実現するとした、23年2月閣議決定の「GX実現に向けた基本方針」(以下、「基本方針」と表記)の遂行に置かれることになる。この基本方針の主要な内容を盛り込んだ「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)は、すでに23年5月に成立している。

 政府が23年2月に発表した「GX実現に向けた基本方針 参考資料」によれば、基本方針の遂行にあたって、重点項目となるのは、以下の7つである。なお、かっこ内は向こう10年間の官民投資額の見通しを示している。

(1)自動車産業(34兆円~)
(2)再生可能エネルギー(20兆円~)
(3)住宅・建築物(14兆円~)
(4)脱炭素目的のデジタル投資(12兆円~)
(5)次世代ネットワーク(11兆円~)
(6)水素・アンモニア(7兆円~)
(7)蓄電池産業(7兆円~)

 ちなみに、原子力(次世代革新炉)は重点項目に含まれておらず、その向こう10年間における官民投資額の見通しは、わずか1兆円にとどまる。

 7つの重点項目に関して、24年には何が起きるだろうか。順次、展望することにしよう。