関西電力、中部電力、九州電力、中国電力が絡んだとされるカルテル事件では、公正取引委員会が合計約1010億円もの課徴金納付命令を関電以外の3社に下した。事件の“扇の要”にいたのは関電だったのだが、いち早く公取委へ事件の事前申告をしていたため、減免制度が適用されて課徴金はゼロ。しかし、一部株主から関電の新旧取締役に対し、3508億円もの支払いを求める株主代表訴訟が起こされた。なぜか。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、訴状や原告への取材を基に同社を巡る株主代表訴訟を掘り下げる。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
課徴金ゼロの関西電力だったが新旧取締役へ
4社中で最多3508億円を求める株主代表訴訟
関西電力が中心となり、中部電力、九州電力、中国電力の各社と結んだとされるカルテル疑惑。公正取引委員会は3月、関電以外の3社に合計1010億円もの巨額の課徴金納付命令を下し、電力業界に大きな衝撃が走った。
事件の“主犯”に認定された関電は、公取委の着手前に事件を真っ先に報告しており、課徴金免除を100%適用された。つまり課徴金はゼロ。
納得がいかないのが中部電など3社で、それぞれ公取委を相手取って処分の取り消しを求める訴訟を提起した。
関電は「公正取引委員会による事実認定について、当社は争わない」(4月の電力・ガス取引監視等委員会への報告概要より)という態度だ。
もちろん業界内では事の顛末に、波風は大いに立った。だが“改心”した関電としてはベストシナリオといえそうな着地ではあった。そこに、関電の一部株主が待ったをかけたのだ。
一部株主は10月、新旧取締役12人を相手取り、3508億円を連帯して関電に支払うよう求める株主代表訴訟を大阪地方裁判所に起こしたのだ。請求額は中部電、九電、中国電でも起こされた株主代表訴訟(請求額28億~707億円)と比べ、飛び抜けた数字となった。
課徴金ゼロの関電であるにもかかわらず、なぜ株主代表訴訟が起きたのか。そしてなぜこれほどの請求額となったのか。原告への取材や訴状を基に解き明かす。