中部電力が地熱発電、小型モジュール炉(SMR)など、海外投資を加速させている。しかしSMRは出資先の米ニュースケール・パワーが11月上旬、コスト高などを理由に米国での初号機の建設中止を発表した。逆風のように見えるが、中部電力は前のめりの姿勢を崩さない。なぜなのか。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、海外投資を担当する佐藤裕紀グローバル事業本部長のインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
「脱炭素しかやらないと決めている」
“エネコ一本足打法”からの脱皮
――2021年に発表した経営ビジョン2.0で、グローバル事業を成長分野に位置付け、10年かけて4000億円投資すると決めています。その進捗状況は?
私がJERA(東京電力ホールディングスと中部電力の合弁会社)から戻ったのと同じタイミングで経営ビジョンは始まりました。戦略的投資枠内でロードマップ通り進んでいます。私はとにかく脱炭素しかやらないと決めています。グリーン領域、ブルー領域、小売・送配電・新サービス領域。この三つの領域を主軸に、フロンティア領域というまったく新しい技術、ストラクチャーを組み合わせていく。そういう絵を描いています。
私が着任した時、グローバル事業はほとんどエネコ(ダイヤモンド編集部注:20年に三菱商事と共に約5000億円で買収したオランダの電力会社)だけでした。その後、エリアとしてはベトナムやインドなどへ広げてきました。セグメントも、例えば英BP社と協力協定を結び、まずは名古屋港でCCUS(分離・貯留したCO2を利用)の調査・検討が進んでいます。エネコ一本足打法から相当、われわれが目指すセグメントにバランス良くアクセス権を得たこの3年間かなと思います。
――注目の投資案件の一つが、小型モジュール炉(SMR)を開発する米ニュースケール・パワーへの出資(出資比率は非公表だが数%とみられる)。同社は11月、SMR初号機の建設中止を発表しましたが、その影響は?
影響はニュースケール・パワーの株価に表れています。ただこれでニュースケール・パワーそのものがつぶれるとかSMR開発をやめるとか、そういう議論に行くのは拙速かなと思います。
次ページからは、佐藤氏がニュースケール・パワーのSMR開発に関し、依然強気な理由を詳細に語る。またSMRの日本での展開に関しても考えを語る。さらに、もう一つの注目投資案件であるカナダの地熱発電ベンチャーへの期待値や地熱大国である日本での展開構想もつぶさに述べる。