コーピングには振り子の紐の調整は不可欠です。もちろん、正確な気づきの精神もそこになくてはなりません。たとえばアルツハイマーのような病名がつくものと、単なる疲労からくる物忘れとは、全く違うものということです。自己観察をして正確な気づきを持つ知識も必要です。

 一例を挙げれば、トイレのスリッパのまま台所で料理をしていたときに、誰かに「しっかりしてよ。それトイレのでしょ?」と笑われ、「やだ!さっきトイレに行ったときにそのまま」と言えたら、忙しさに追われているウッカリミスです。ところが自分の足の先を見て、スリッパを指しながらしばらくじっと考え、「これ何でしたっけ?」となったら、病名がつきます。

とらえ方、考え方を変えることも
ストレスコントロール

 自分自身に正確な気づきを持つことは、ストレスに対しての抵抗力も強くします。物忘れとコーピングしながら抵抗力を強め、失敗の少ない生活をするにはどうしたらいいか。まず、ひとつのことが完成できるかどうか確かめてみてください。

 先に書いた買い物の話にもどりましょう。単に脳が疲れているだけかどうかを確かめるには、「薬局でビタミン剤だけ買う」を一度やってみることです。これが物忘れのストレスに対する抵抗力を強くすることにつながります。

 たいていの人は、これと反対のことをやります。物忘れが激しくなったと思うと、逆にもっとたくさんの買い物ができるどうかにチャレンジしようとしてしまうのです。スーパーの帰りにどこそこ、あそこもここもと2軒3軒まわって、帰りがけにもう1軒と無茶をします。これは、自分が物忘れが激しくなったのではないかという不安をかき消したくて起こす衝動的な行動です。自分がまだ大丈夫かどうか試してみて安心したい。これは抵抗力を強めていくことと全く反対の効果をもたらしてしまいます。

 頭がぼんやりしたまま、あわただしく時間を使って、あちこちで物忘れが増大していき、抵抗力が強まるどころか、かえってストレスが膨張していき、心がつらくなってきます。

 そして、気が付くと、たったひとつのことすらも完成できない自分、つまり精神的に大変不安定な状態になっている自分がいることに気付くことも多いのです。心療内科的治療が必要な症状が出始めたと思っていいでしょう。