福井銀行がAIで来店客数や預貸金残高を予測、キーエンスのデータサイエンティストが伴走支援Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 福井銀行は、2022年4月にスタートした中期経営計画において「地域産業の育成・発展と地域に暮らす人々の豊かな生活の実現」のために、AIやデータを積極的に活用して、デジタル技術によるサービスの変革(DX)とサービスの質の向上を実現することを掲げている。そのため、デジタル化推進ワーキンググループ・データ利活用部会を立ち上げ、行内のデータ利活用を進めてきた。本稿では、データ利活用部会の3本柱である「内製化」「民主化」「生成AI」への取り組みを紹介する。

地銀連携によるAI開発の内製化

 データ利活用は地方銀行が直面する重要な課題の一つである。しかし、小規模な銀行にとって、単独で内製化を進めるためには、乗り越えるべき多くの障壁がある。

 この課題に対応すべく、福井銀行を含む地方銀行8行(注1)は「フィンクロス・パートナーズ」という戦略的連携協定を締結。研究・開発の成果を実用化するための共同出資会社「フィンクロス・デジタル」を2018年に設立した。フィンクロス・デジタルのスキームを活用して、共同でデータ利活用・AI開発の内製化を進めることで、外部依存を減らし、迅速で柔軟な意思決定が実現可能になった。このような取り組みは、運用コストの削減と顧客サービスの向上をもたらし、競争力の強化にもつながっている。

 フィンクロス・パートナーズの協定行は、データ分析の専門知識と経験の習得を目的として、フィンクロス・デジタルへ職員を出向させている。出向職員はプロパー職員と共に、参加行から提案されたテーマに沿って、具体的な分析業務やモデル開発に携わっている。

 このようなプロジェクトにおいては、プログラミング言語Python(パイソン)による機械学習モデルの構築が主要な役割を担っており、具体的な業務データをもとに分析作業を行うことで、実践的な成果と深い専門知識が蓄積される。当行がリクエストしたテーマは、図表に記載した二つだ。

 2テーマのほか、現在、与信判断の迅速化と精度向上を目的として、企業の財務・取引データからデフォルトを予測するAIモデルも開発中である。これが達成できれば、取引先への融資回答スピードを速めることができるなど、他金融機関との差別化につながると考えている。