会見で頭を下げるダイハツ工業の奥平総一郎社長、トヨタ自動車の中嶋裕樹副社長12月20日午後、会見で頭を下げるダイハツ工業の奥平総一郎社長(左)とトヨタ自動車の中嶋裕樹副社長(東京都文京区) Photo:SANKEI

ダイハツ工業の検査不正問題で、第三者委員会が新たに174件の不正行為を認定し、トヨタの車種を含む全車種の出荷停止に追い込まれた。第三者委員会は、短期での開発を求めた経営陣に責任があると指摘。出荷停止が長引けば国内に約8000社あるとされる取引先への影響は避けられない。親会社であるトヨタ自動車の監督責任が問われることになりそうだ。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

出荷停止の影響受ける取引先は8000社
豊田章男会長は会見を欠席

「日本の国土に合った国民の足となる車として利用してもらったがその信頼を裏切ってしまった」――。12月20日、東京都内で開かれた記者会見で、ダイハツ工業の奥平総一郎社長は報道陣にこう陳謝した。

 4月の不祥事発表の際は、トヨタ自動車の豊田章男会長が会見に出席し、ガバナンスの改善に自ら取り組む姿勢を示していたが、今回の会見には姿を現さず、代わりに中嶋裕樹副社長が釈明に追われた。

 ダイハツ工業の検査不正問題で第三者委員会が新たに174件の不正行為を認定した。これまで明らかにしていた不正に加えて、速度計の試験において虚偽の記載をしたり、前面衝突試験でリハーサル時のデータを差し替えたりする不正も認定するなど、第三者委員会の調査前に公表した不正が大幅に拡大した。

 不正があった車両は、すでに生産を終了したものを含め64車種となった。その中には、トヨタが販売しているワゴン車「ルーミー」や小型SUV「ライズ」など22車種も含まれているという。

 第三者委員会は不正行為の発生を想定せず、短期開発を急がせた経営陣に責任があると指摘。ダイハツの開発部門に、「できて当たり前」の発想が強く、何か失敗があった場合に激しい叱責や非難がされる組織風土にも問題があると結論付けた。

 管理職が認証試験の実務や現場を把握していない状況が続いていたことも明らかになった。第三者委員会のメンバーで、国土交通省出身の中山寛治氏は「(自動車メーカーは)現地現物主義であるはずなのにダイハツはなされていなかった。そこが非常に大きな問題だ」と強調した。

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