頼氏が歩むいばらの道

 台湾総統選挙で民進党の頼氏が当選したものの、得票率は50%を下回った。さらに国会に相当する立法院の議席数(定数113)については、与党・民進党は過半数はおろか、国民党より1議席少ない51議席に終わった。

 中国国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は13日夜、台湾の選挙結果について「今回の選挙は、両岸関係の発展の方向を変えることはできず、台湾海峡両岸の同胞の緊密になりたいという共通の願望を変えることもできない。必然的に統一されるだろう」と述べた。

 駐在経験もあり台湾情勢に詳しい日本人ビジネスマンは、中国側の反応について「頼氏当選への嫌悪感は示すものの、抗議は外交上の形式的なレベルにとどまっており、台湾の人々が平和をおびやかされることを嫌った選挙結果に、前向きなサインを出しているように感じます」と語っている。

 一方、ジャーナリストの旺さんは、この現状について「頼氏にとって政権運営はこれからが大変です」と先行きを懸念する。

「立法院では3党とも過半数を取れず、法案を通すためには野党との連携が必要になるわけですが、互いに協力できない民進党と国民党は、民衆党に秋波を送ることになるでしょう。一方、これまで頼氏は強固な独立論者でしたが、総統になった以上、穏健な路線を取らざるを得ないはずです」

 中国はこれまでさんざん、頼氏と前駐米代表の蕭美琴氏(副総統に就任予定)を“史上最悪の独立ペア”だと批判し、ブラックリストにまで載せていた。

「頼氏が独立を宣言することはないとわかっていても、習近平氏は敵視し続けてきた民進党に対する『振り上げた拳』を簡単に下ろすわけにはいかないし、中国の民意も黙っていないでしょう。果たして習近平氏は、自らあおり育てたナショナリズムにどう対応していくのでしょうか」(同)

 中国では、決定権が習近平氏一人に完全に集中し、官僚は助言機能を完全に失うなど、潜在するリスクもある。台湾海峡は依然として「波高し」で、張り詰めた空気に包まれている。