「中国が台湾を統一しようと思えば、武力なんていらない」
今回の総統選挙を経て、中国はどう出るのだろうか。
台湾では1月3日、国防安全研究院が「2023年中国共産党政治軍事発展評価報告(2023 中共政軍發展評估報告)」を発表し、「現段階では台湾海峡で戦争が起こる可能性は低い」とする分析を明らかにした。
同報告書は、「習近平には台湾統一の明確な意図があるがその手段ははっきりしておらず、平和的統一または軍事的統一の両方が選択肢として考えられるも、現段階では中国が『軍事的統一』に踏み切る可能性は低い」と指摘している。
ジャーナリストの旺さんも「負け戦をすれば、自分自身も中華人民共和国も終わってしまうことは習近平氏もよくわかっていて、台湾を戦わずして手中に収めたいというのが本音でしょう」とにらむ。
そこからは、「戦わずして勝つ」という『孫子の兵法』の思想が見えてくる。台湾では『孫子の兵法』を「中国の台湾統一戦略のベース」だとみる研究者は少なくない。
中国には長い歴史を持つ軍事文化がある。孫子に代表される東洋の兵学は、「必ずしも戦いで勝利を収めることを求めておらず、戦わずしていかに相手を制圧するか」に重きが置かれている。
これを習近平政権の野望に当てはめれば、大陸に進出する台湾企業に積極的に優遇政策を与える、中国の居住証を取得した台湾人に経済的恩恵を与える、などの現実的な作戦が浮かび上がる。
大陸の不動産を割安で購入できるという政策や、新台湾ドルを持つ台湾市民にとって人民元との交換レートを有利にするなどの政策も「孫子の兵法的発想」となるだろう。台湾人への取材を通しこんなコメントを耳にしたこともある。
「中国と台湾はゾウとネズミだといえます。中国が台湾を統一しようと思えば、武力なんていらない。中国の戦闘機だって米国に見せるための演出にすぎません」(台北市在住の主婦)