あとで聞いたら、サードプレイスとしてお酒を楽しむけれど、そこを拠点にみんなが集まって、それぞれのスキルを発揮できる場所をつくりたかったということでした。だから、その場所に「住む気はない」ということが、はっきりされていました。

 そこで、まずてつじさんが希望するA市の空き家物件を見て回りました。その地域には不動産屋はあったのですが、行政に相談して8軒ほど紹介してもらったのです。ちょうどA市が「移住促進のまち」だったことで、話がスムーズに進みました。

 物件を回って8軒目、前の日に情報が出たばかりという家を見たときに、「これ!」と即決でした。それは緑に囲まれ、1階には広い座敷があり、2階には小さな部屋がある、バッチリ南向きの味わいのある古民家でした。

「将来こういうことをしたい」「友だちやお客さんの車をとめられるスペースはあるか」「周りに協力してくれる人はいるか」といった、家の使い道から逆算して物件を探すのも大事なことです。

クラウドファンディングで
リフォーム代の寄付を募った

 家はてつじさんが自費で購入され、リフォーム代はてつじさんがクラウドファンディング(FANY Crowdfunding)で集めました。「家はてつじが買いました。場所はある。だからあとは、使う人たちがお金を出し合ってくださいね」と呼びかけたのです。その集まったお金でキッチンなどを整えて、いろいろな人が使いやすいようにリフォームしました。

 生まれ変わった家を公開すると、ヨガ教室に使われたり、将棋大会が開かれたり。家の中には、ソファに座り込んでおしゃべりしている人たちもいます。中でも異色だったのは、オペラのコンサートが開かれたこと。