倒産危険度ランキング2024&初公開!企業を倒産させた金融機関ランキング#19Photo by Yoshihisa Wada

非上場企業のため倒産危険度ランキングに入っていないが、四国の名門製紙会社・丸住製紙が深刻な経営不振に陥っている。丸紅の持ち分法適用会社でもある同社は、製紙業界や地元では非常に注目度が高い。実は丸住製紙は、大王製紙の主力工場・三島工場の隣に位置している。特集『倒産危険度ランキング2024&初公開!企業を倒産させた金融機関ランキング』の#19では、ダイヤモンド編集部の取材で判明した、丸住製紙の厳しい経営状況を元大王製紙会長の井川意高氏にぶつけ、同社の苦境について解き明かしてもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

新聞用紙が花形だった時代
丸住製紙は「欲しかった会社」

 四国の名門製紙会社、丸住製紙(愛媛県四国中央市)が経営危機に直面している。同社は丸紅が株式の32.2%を保有し、丸紅の持ち分法適用会社になっているが、売上高が4年で2割強も減少。この間3回も最終赤字を計上し、資金繰りが厳しくなっている。

 紙・パルプ業界は市場の縮小が続き、供給過多で厳しい競争にさらされている。各社は「自社以外のどこかが、早くつぶれてくれないか」と固唾をのんで見守っており、丸住製紙の経営の行方に注目が集まっている。

 そこで本特集の#12『井川意高・元大王製紙会長が忖度皆無で喝破「紙・パルプ8社」倒産危険度ランキング』に続き、井川氏に丸住製紙の現状について考えを聞いた。

――丸住製紙は、古巣である大王製紙の隣にある会社です。同社の経営状況について、どのように見ていますか。

 丸住製紙は新聞用紙が主力なので、やっぱり足元は厳しいですよね。新聞用紙が花形分野だった時代には欲しかった会社です。

 丸住製紙の工場は、大王製紙の三島工場(愛媛県四国中央市)と比べて規模が小さく、港湾の水深が浅い関係で原燃料の運び込みが不便。このため余計なコストがかかります。ですが一緒になれば効率化できるし、お互いにとってメリットがあると考えていました。

 丸住製紙は1919年の創業。大王製紙と同じく、あのど田舎で星川家の先々代が手すきの和紙から事業を始め、戦後の高度成長期の波に乗って大きくなった会社です。今の社長の星川知之氏が3代目で、年齢は私より少し下だったかな。

――現在は丸紅のグループ会社となっています。

井川意高・元大王製紙会長いかわ・もとたか/1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、87年大王製紙入社。2007年に社長。11年6~9月に会長。著書に『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』『熔ける 再び そして会社も失った』(共に幻冬舎)など。 Photo by Y.W.

 かつて丸住製紙が経営危機にひんしたときに、丸紅が出資したのです。そういう経緯もあって、丸紅の歴代社長には「今後、丸住製紙に何かあったときは、(業界首位の)王子ホールディングスではなく大王製紙に……」というようなことを伝えていました。

 新聞用紙が花形だった時代、王子も丸住製紙を欲しがっていたはずです。王子は新聞用紙の生産拠点を西日本に持っていなかったので。

 なので、丸紅側には「何かあったら、うちに声を掛けて」ということを、ずーっと。もちろん、ここまではっきりとは言いませんよ。星川家が反発して、来るものも来なくなっちゃうかもしれないですから。

――その丸住製紙ですが、近年、業績の悪化に苦しんでいます。新聞用紙などの需要減少で、4年前に629億円あった売上高は2022年11月期に491億円まで減少。この間、純損益の赤字を3回も計上し、金額も52億円(19年11月期)、60億円(20年11月期)、117億円(22年11月期)と企業規模と比べて巨額でした。

次ページでは、ダイヤモンド編集部の取材で判明した、丸住製紙の資金繰りが逼迫するであろう時期や、深刻な未払いなどについて詳らかにする。こうした厳しい経営の実態を井川氏にぶつけ、同社の苦境について解き明かしてもらう。

また、「大王製紙による丸住製紙の救済はあり得るか?」という問い掛けに対し、井川氏は両社の生産設備を踏まえて分析・回答。さらに、融資残高で三井住友信託銀行がトップであることなども含めて、丸住製紙の金融機関政策についても考えを聞いた。