大手保険会社のアクサグループは、2024年から新人事戦略を世界51の国と地域で展開する。グローバル人事トップのカリマ・シルヴェント(Karima Silvent)氏は、日本の中小企業において「マインドヘルス」への対策が不十分だと警鐘を鳴らす。具体的な課題の中身と解決策について、自身の体験談を交えてもらいながら、話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・ライフ編集部 大根田康介)
新しい人事コンセプト
「Care&Dare」が生まれた背景
――2024年から世界で始まるアクサグループの新人事戦略について、計画された背景をお教えください。
当社は、新人事戦略の前提として人を大事にし、思い切った挑戦をする組織を目指すコンセプト「Care&Dare」を23年10月に公表しています。このコンセプトが生まれた最大のポイントは、従業員の会社への期待が高まっていること、また外部環境として、世界的にリスクが変化しているということです。特にマインドヘルスや身体的な健康の分野で、リスクが高まっていると考えています。
そこで、この点を人事ポリシーに反映して従業員を「Care」するプログラムを新たに導入し、従業員をサポートすること、そしてアクサの企業姿勢として、アカウンタビリティー(説明責任)、エンパワーメント(自律性促進)を勇気を持って実行できる「Dare」という形で示していくことにしました。
――アクサが考える「世界で最も大きなリスク」には、どのようなものがありますか。
当社では世界2万5000人の専門家やエキスパートにインタビューを行い、「Future Risk Report 2023」というリスクに関する報告書を公表しています。このレポートの中でも触れていますが、最大のリスクは気候変動です。加えて、地政学的なリスク、ウクライナやイスラエルでの戦争なども挙げられます。
これらは相互に関連し合う、いわゆる「ポリクライシス(複合危機)」といえます。ほかにもサイバーリスクやAIについても、今後ますますリスクが高まってくるでしょう。AIについては、ポジティブな側面が注目される一方で、適切に管理されなければリスクに発展する可能性もあると考えられています。
このレポートでは、さまざまな健康リスクについても触れられています。
――アクサはマインドヘルスに関するグローバルな意識調査も行っています。また日本では、地域のステークホルダーと連携し、中小企業向けに健康経営の導入・実践をサポートする取り組みを行っているとのことですが、内容について具体的に教えてください。