中国電力の島根原子力発電所中国電力の島根原子力発電所 Photo:PIXTA

能登半島地震で改めて注目が集まった原子力発電。昨年末に開催されたCOP28での議論でも明らかになったように世界は原発推進のメガトレンドにある。日本はどうするのか。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、COP28であった原発関連の「意外な展開」を振り返り、日本の原発政策の未来を占う。(エネルギーアナリスト 巽 直樹)

行き詰まりを感じる中、
COP28は意外な展開に

 UAE(アラブ首長国連邦)のドバイで2023年11~12月に開催されたCOP28(第28回国連気候変動枠組条約締約国会議)の成果について、国内では「化石燃料からの脱却」が合意文書に盛り込まれたことにスポットが当たり、これまでのところおおむねポジティブな評価が下されているようにみえる。

 一方、国外に目を向けると、この会議に大きな成果があったと捉える向きは多くはなく、強い関心が払われているような印象も受けない。もっとも、前年にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27以降は、刮目するべき結果があるわけでもないため、この傾向は強まっている。

 むしろ、年を追うごとにこの会議が博覧会的なイベントの様相を呈している側面に対して揶揄(やゆ)する声すら上がっている。筆者も以前に指摘した通り(23年9月19日配信『もはや「無理ゲー」?温室効果ガス排出削減の国際合意が迷走!COP28の結末を予想』)、重要な何かが決まると、期待を持って注視していたわけでもない。

 実際、1.5℃目標(世界の気温上昇を1.5℃に抑える)達成に向け、争点となっていた化石燃料利用の取り扱いに関しては、以前からの議論の流れを踏襲したものとなった。欧米を中心に「段階的廃止(フェーズアウト)」に進むべきだと主張したが、これに対して産油国など多くの国が反発したため紛糾した。

 閉幕日に夜を徹した議論が行われ、会期を1日延長した結果、合意文書には上述の曖昧模糊(もこ)とした表現の文言が記載された。結局、既に顕在化している南北問題という対立構図の存在を、改めて浮き彫りにする印象を残した。

 他方、全世界で再生可能エネルギー導入量を30年までに現在の3倍にすることは主要なアジェンダとなるため、少なくともこれに関しての合意がなされると多くの人は考えていた。

 この場合、再生可能エネルギーの導入余地に乏しい日本は、難色を示さざるを得ないことも予想されていた。しかし、こうした行き詰まりを感じる空気の中、今回は意外な展開が見られた。