電柱で作業する人Photo:PIXTA

2023年度の新電力全体の電力販売量で、主に家庭向けを指す「低圧電力」のシェアが、主に法人向けを指す「高圧・特別高圧電力」のシェアを初めて逆転する見込みであることが分かった。Looop、九電みらいエナジー、東急パワーサプライ、出光興産、大和ハウス工業、楽天エナジーといった多くの新電力による低圧電力シェア伸長が寄与した。一体、業界で何が起きているのか。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、低圧電力のシェアが伸長している裏事情に迫る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

2023年度は7カ月間で
低圧電力シェア54%!

 新電力全体の電力販売量で、2023年度に家庭向けの「低圧電力」のシェアが法人向けの「高圧・特別高圧電力」のシェアを初めて逆転する見込みであることが、資源エネルギー庁の電力販売量データから判明した。

 ダイヤモンド編集部が本稿執筆時点で公開されている23年10月分までの同データを分析したところ、23年4月~10月の全電圧に占める低圧電力の販売量シェアは54%に達した。高圧・特別高圧電力は年度単位での契約が多いため、少なくとも23年度末まで低圧電力が高圧・特別高圧を上回る傾向が続く可能性が高い。

 低圧電力とは主に家庭向けを指す電圧の種類。一方、高圧・特別高圧電力とは主に法人向けを指す電圧の種類である。電力小売り自由化は2000年に特別高圧、05年には高圧、16年には低圧という順番で解禁されたため、高圧・特別高圧電力のシェアがこれまで低圧電力のシェアを上回っていた。そもそも大手電力と新電力合算の全電圧に占める高圧・特別高圧の電力販売量は、低圧電力販売量を圧倒している。

 それにもかかわらず、低圧電力の小売り自由化からわずか7年で、新電力ではシェアが逆転することとなったのだ。

 実は16年度以降の毎年度の低圧電力販売量シェアの伸長は、販売量の伸長に比例していた。だが23年度の10月分までは、前年同期比でシェア伸長したものの販売量は微減している。

 そこに低圧電力販売量シェアが初めてトップとなった裏事情が凝縮されている。