「都内で子育てとかそもそも無理ゲー」

――ちなみに、過酷な環境で育った過去を言い訳にはしなかったんですか?

 言い訳にはしていませんが、「意味付け」はしています。自分の家庭を持つようになって、家族に対する好奇心がとても強い。それは自身の育った環境が影響していると思っています。

 それから、家庭で経験したことは「学び」に変えています。「ああ、子どもを育てるのって、こういう点で大変なんだ」と体感すると、日本が少子高齢化する理由がよく分かるんです。

 子育てにはお金もかかる。親が割くリソースも相当です。そういったことを合理的に考えると、子どもは産まない方がいいって思っちゃいますよね。親2人で子2人を育てるとか、ほとんど無理ゲーだなと。都内で子育てなんてさらに無理ゲーですよ。東京の港区とかは今、子育て支援が手厚いみたいですが、まともな教育環境に子どもを入れて、共働きだから家事代行も入れようという話になると、とんでもない費用になる。なら、「もう日本、無理だな」ってなるじゃないですか。

――そういった切迫感が、新たな発想を生むこともありませんか。

 だから僕は、「移民を受け入れる必要があるな」とか「家事代行の制度を充実させる必要があるな」と感じるわけです。香港やシンガポールはそれをやっている。国などがそういう対応をしなければ、親がアンラーン(unlearn ※注)するなんてできないですよ。そういう現実を知ると、「何を改善すれば日本が強くなるか」みたいな議論で地に足のついた話ができます。(編集注:知識や価値観などを捨てることで、思考をリセットさせること)

――幼いころから続けている、現在の成田さんを作った習慣はありますか?

 世の中で起きたことをいったん自分で深掘りすることですかね。イスラエルとハマスの問題もそうだし、今の円安の構造もそう。出来事を自分で調べてみて、「じゃあ、1年後はどうなっているか」ということを考えて自分なりに答えを出す。そういうことは続けてきました。新しいプロダクトが出てきたときもそうです。グーグルの次世代生成AI「Gemini(ジェミニ)」が出てきたら、とりあえずそれが良いのか悪いのか評価できるまで使ってみます。

 努力と言うと大げさですが、「感動」経験を糧に、積み重ねています。例えば、iPhoneが出た時のスティーブ・ジョブズのスピーチってありますよね。僕、その動画を10回は見ていて。感動が焼き付くとでも言いましょうか。MITメディアラボ副所長の石井裕さんの動画も何十回も見ました。で、「自分も新しいものを生み出してみたい」と思ったんです。