物価の実勢は「一時的要因」を除けば分かる

 東京都のCPIを品目別で見ると、宿泊料の伸びが59%(12月)から27%(1月)と大きく鈍化した。前ページで触れたように、これは22年から23年にかけて行われていた全国旅行支援の影響が出たものだ。

 日銀は展望レポートの中で、全国旅行支援を含む、政府による補助金などを「一時的要因」と見なし、これを除去することで物価の実勢を見ようとしている。おそらく日銀内部でも、この手法で物価の実勢を把握しようとしているのだろう。

 そこで、日銀と同じ方法で「一時的要因」を除去してみた。結果は図1にある。この図ではCPIを財とサービスに分けた。「一時的要因」は財には関係なく、サービスにのみ影響している。

 青実線の財は、昨年の夏から伸び率が鈍化している。これは輸入物価上昇の国内価格への転嫁が一巡したためだ。

 ここでの注目はサービスだ。赤実線は「一時的要因」を除去する前であり、1月に大きく落ちているのが分かる。これは先ほど述べたように宿泊料の伸びの鈍化による。

 そして、全国旅行支援などの「一時的要因」を除いた赤破線をみると、1月の大幅な鈍化はなくなっている。これは期待した通りだ。

 しかし同時に、昨年の夏頃から緩やかに伸びが鈍化していることも見えてくる。つまり、昨年後半にサービス価格が大きく伸びたのは「一時的要因」によるものであり、実勢はそれほど強くなかったということだ。

 この結果は、1月の大幅な落ち込みに驚く必要はないと安心させてくれると同時に、サービス価格の実勢はそれほど強くないという警鐘も鳴らしている。