公的年金の積立金の運用見直しが
会計検査院の指摘でとは情けない

 3月25日、月曜日の『日本経済新聞』の朝刊の一面トップに、公的年金の積立金の運用見直しの記事が載った。見出しは、「海外インフラにも投資」「公的年金 運用、毎年見直し」である。国民年金と厚生年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針を、「抜本的」に見直すのだという。

 年金問題は、すぐに結論が出ない。したがってニュースとしては急がない記事や、いわゆる「観測記事」が多いので、緊急性のある経済ニュースが少ない月曜日の朝刊に載ることが多い。例によって「検討中」の問題を報じており、「ヒマネタ」的な記事だが、内容には、いくつか考えさせられる問題がある。

 運用方針の抜本的な見直しに至った経緯として、「04年度から運用資産の構成を変更しておらず、昨年10月に、会計検査院からも機動的な見直しが必要と指摘された。このため、GPIFでは」と記事にはある。

 考えてみると、これはかなり妙だ。

 GPIFの運用方針は、外部の専門家で構成される運用委員会の検討を参考に、理事長の責任で決定されている。「国内株式」「海外株式」などの大まかな資産分類(「アセット・クラス」と呼ぶ)の基本的な配分計画を決めた「基本ポートフォリオ」は、確かに04年から動いていないが、GPIFとしては運用方針の適切性を毎年見直している建前ではなかったか。

 また、基本ポートフォリオが動いていなくても、基本ポートフォリオが定める資産配分計画には、かなり大きな「許容乖離幅」(注:私見では少し大きすぎる)があり、現実のポートフォリオも基本ポートフォリオとズレがあり、このズレは変動していたはずだ。

 一方、会計検査院は、公費の使用が適切であるか否かに関してチェックを行うプロであはあろうが、たとえばアセット・クラス別の期待リターンを推定するような運用の意思決定のプロではない。