シェアの低下と新型バッテリー製造の難航
23年10~12月期、値下げ攻勢を強めたBYDは、テスラを抜いて世界シェアトップのEVメーカーに躍り出た。専門家が、「カット・スロート・コンペティション(過酷すぎる競争)が起きている」と危惧するほど、EVの値下げ競争が止まらない。
一方、原価の引き下げは一朝一夕にはいかない。値下げに拍車がかかると、どうしても企業の収益性は低下する。
また、米国ではGMやフォード、韓国の現代自動車などもEV投入を強化している。このことからも23年10~12月期、米国のEV市場でテスラのシェアは前年同期の58%から51%に低下した。EV市場はもはやブルーオーシャンではなく、レッドオーシャンに変化したのだ。
23年11月、テスラは新モデル「サイバートラック」の出荷を開始した。当初、テスラは車載用バッテリーについて、新しい製造技術を用いる方針だった。製造コストを従来の50%未満に抑え、より小型で、脱炭素などにも対応した新型バッテリーを自社で生産する。それをサイバートラックに搭載し、年25万台の供給を目指した。
しかし、テスラはこの新型バッテリーの基幹部品である電極を、中国企業から調達すると報じられている。新型バッテリーの製造技術の実用が、同社の想定通りに進まなかったようだ。中東情勢の緊迫化によってタンカーの運賃が急速に上昇しているため、多くの追加コストが発生している。
売上高の減少、人件費の上昇も含む米国での生産コストの上昇、さらには想定外のバッテリー調達コストの発生により、テスラの収益性は低下した。23年10~12月期、売上高から売上原価を控除した粗利益は、前年同期比23%減の44億3800万ドル(約6600億円)に落ち込んだ。粗利率は6.12ポイント低下し17.6%となった。