マグニフィセント・セブンから脱落の恐れ
期待の新モデルだったはずのサイバートラックの生産台数は、年間2万数千台レベルにとどまりそうだ。中国事業の難しさも増す。米中対立の先鋭化、安全保障への懸念から、中国でテスラの乗り入れが制限される場所が増えている。
一方、米国や欧州諸国の政府は、中国製EVによる過度な価格競争を懸念している。中国からの輸送距離が長いため、脱炭素に逆行するとの批判も出ている。そのためテスラは地産地消体制を強化して、主要先進国のEV需要を確保することが急務となっている。
米欧では労使対立が激化している。また、レアメタル調達を巡る鉱山の権益獲得競争も熱を帯びた。テスラにとって、中国や欧米市場での販売増加ペースが鈍化する一方、コスト増加圧力は高まるばかりだ。
そうした状況下でも、テスラの先行きに強気な主要投資家はいる。創業者であるイーロン・マスク氏が生産能力強化のために大胆な行動に出る、と期待しているからだ。
とはいえ全体としては、テスラの今後の業績を慎重に考える投資家が多い。それは、年初来のマグニフィセント・セブンの株価から確認できる(いずれも1月26日まで)。
・テスラ 26.3%下落
・グーグル親会社のアルファベット 8.9%上昇
・アップル 0.1%下落
・メタ 11.4%上昇
・アマゾン 4.7%上昇
・マイクロソフト 7.4%上昇
・エヌビディア 23.2%上昇
やはり、他社に比べてテスラの下げ幅が目立つ。
投資家が懸念するのは、生産体制の確立や製造技術の向上に、想定以上のコストがかかることだろう。同社はテキサス州で次世代モデルの生産を準備しているが、バッテリー製造の問題を考えると、計画通りに進むか不透明だ。
今後、テスラの株価はますます不安定になる可能性が高い。新モデルの生産が想定通りに進まなければ、マグニフィセント・セブンからの脱落も現実味を帯びる。それは同時に、米国の株式市場全体に変調をきたす可能性もあるはずだ。