新しいところでは、大分県別府市で一昨年6月に起きた大学生死亡ひき逃げ事件で、警察庁は昨年9月に逃走中の八田与一容疑者を重要指名手配に指定した。特別報奨金300万円(同)と私的懸賞金500万円(同)が設定されると、昨年11月末時点で2290件(計3769件)の情報が寄せられたという。

 特別報奨金の制度ができる以前では、1982年8月に松山市内でホステスの女性を殺害した福田和子元受刑者(2005年に死亡)について、逮捕に結びつく情報提供者に愛媛県警察協会が100万円、福田元受刑者の整形手術をした病院が400万円を贈ることを決めた。多くの情報が寄せられ、福田元受刑者は15年間の逃亡の末、時効直前の97年7月に福井県で逮捕された。福田元受刑者がよく訪れていた飲食店主の通報が決め手となったことから500万円も支払われた。

 記者もこの事件を取材していたが、振り返ると当時は現在のようにインターネットが普及しておらず、スマートフォンで写真を撮ってSNSに投稿するというような方法は存在しなかった時代。愛媛県警は広く情報を集めようと、福田元受刑者の写真入りテレホンカードを配っていた。情報の集まり方も現在とはまったく違うことも背景にあったと感じる。

懸賞金が増えれば注目度も、情報も増えるはず

 警察の裏金問題を告発した元愛媛県警巡査部長の仙波敏郎さんは、現場の警官として福田元受刑者の行方を追った一人。

「福田元受刑者が注目されたのは、当時では巨額と言われた報奨金です。発表直後は『裏取り』が大変なほど情報が寄せられました。桐島容疑者と金容疑者は判明したが、今も未解決で懸賞金がかかっている事件は10を超えます。金容疑者の例でもわかるように、指名手配は市民の通報で発覚することが大半です。人手はかかるが、懸賞金をさらに増やせば、注目度も、情報も増えるはずです」

 と話している。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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