武器をつくる練習と、武器を使う練習

 これも全く別の話になります。「刀をつくるのと、刀を使うのは違う」ってことは簡単にわかるのに、武器をつくる練習は地味なので「この武器が完成すれば使える、勝てる」とつい思いこみたくなるものです。結果、使う練習の割合がガクッと減ってしまい、技はできるようになったけど使えない、という状態に陥ることも。400戦無敗と言われた伝説の格闘家、ヒクソン・グレイシーは、最終的な決め技の種類はそんなに多くない選手でしたが、そこに至るまでの技術が多彩で、対戦相手はいつの間にか「極められて負ける」のコースに引きずり込まれているような戦い方でした。

自分のキャパシティを拡大する練習と、スタミナや技術をロスなく使う練習

 これらも真逆の方向性です。キャパを拡大するには、スタミナを使い切る、技術を全て出し切る、などオールアウトが必要です。ですが、キャパを上げる練習ばかりしていると、スタミナの使い方は下手になってしまいます。チャンスまで動きながら待つ、などの練習をしていく必要があります。

 このように、練習にはいろいろあります。どの面を伸ばすのか? ジェネラリストで行くか? それともスペシャリストでいくか? 強烈な個性を目指すか? カメレオンのような七変化を目指すか? やはり練習を考える上で大切なのは、「どうなりたいか」から現在を見直す作業でしょう。

 ゴール:どうなりたいのか?
 現在地:現状はどうなのか?

 この2つを明確にして、ゴール側から現在地を眺めてみる。「なりたい自分」は現在ではなくて未来にいるわけですから、向こうからこっちをみれば、「やるべき練習」が見えてくると思います。いつの間にか「この練習をやれば上手くいく」にひっくり返ってしまったり、「やって当たり前だから」と練習を検証しなくなり惰性で続けてしまったり、「これはうちの伝統だから」みたいな思考停止に陥ったり、そういう落とし穴がたくさんあって(私自身何度も落っこちてきたので)同じ轍を踏んで欲しくない、と思い、練習について記してみました。