私はビジネスでの必要上、これについても予測しているが、単純に解体・取り壊しになる戸数の計算を間違えているだけだ。私がより正確な実態を言い当てられるのは、日本一と自負する不動産ビッグデータを使って、多面的に予測値の確度を検証しているからである。空き家率は賃貸であれば空室率、持ち家なら売り出された戸建の成約状況として現れるから、5年後の実績を待たずして、途中経過で把握できる。外れない予測を作るには、それなりの方法があるのだ。

 ちなみに、国土交通省が別途調査した『空き家所有者実態調査』によると、55%が相続で取得され、空き家のうち6割は物置として利用されており、特段の使い道がない状況にある。このため、空き家は不動産市場に大挙して出てくることもなく、価格への影響はほぼない。だから、「空き家が多いから需給は緩む」という話にもならないのだ。

【説3】供給過剰となり、需給バランスで価格が崩れる

 これについては、「『不動産暴落』を煽る本は捨てなさい。信じると“まともな家”を買えない理由」で詳しく説明した。簡略化すると、新築分譲マンションは財務体力のある大手デベロッパーが多く、原価が高いものを値引きしてまで売らないことに加え、新築の棟数は首都圏で年間300棟しかない状況で、競合物件が少ないために需給バランスがそもそも働かない。中古マンションは新築価格に連動するので、これも需給の影響は限定的だ。

いよいよ始まる金利上昇への不安
そのとき不動産価格はどうなる?

【説4】そろそろ金利が上がるので、価格が下がる

 金利が上がると、住宅ローンの返済総額が増えるため、買主が買い控えすることにより、不動産は売れなくなると言われる。長期固定の住宅ローン金利は確かに上がった。しかし、短期変動の金利は上がっていない。それぞれ、長期プライムレートと短期プライムレートと連動するが、長プラは日銀が金利上昇を容認したことで、上がった経緯がある。

 日米の長期国債利回りの金利差と円ドルレートをこの1年間で比較すると、ほぼ同じ動きを見せる。統計的には相関係数0.9なので、金利差が為替レートを決めていると考えられる。つまり、運用に困った資金は長期国債利回りが高い国の通貨に替わるために、他国通貨よりも強くなる。日銀の容認も円安を止めるためとも考えられる。