トヨタ自動車には、職域やキャリアなどには関係なく、カイゼンのアイデアをA4の紙1枚に書面化してまとめ、提出すると1枚につき500円の報酬がもらえるという仕組みがありました。
それも単にアイデアを出すだけではなく、実行して、その結果や費用対効果を書面に落としてアウトプットし、他の社員に評価してもらって、どういう内容だったかを評点してもらうのです。評点によって報酬の金額が変わります。
一方、まだ実施されていない構想段階のカイゼンには報酬が一切出ません。アイデアを出しただけでは、現実は何も変わっていないからです。
どんなに小さなカイゼンでもいいので実行し、それに対して費用対効果がこれだけありましたと可視化することが重視されていました。
この場合の費用対効果は、大袈裟なものではありませんが、客観的な数字で示します。
前述の配線コードの例でいうと、そこを通り過ぎるのに気にしながら歩いていたら1回30秒損していました。そこを1日10往復するのであれば300秒損することになります。
それが解決されれば、1日300秒分の儲けが増えます。それが年間になればこれくらいになると示すわけです。
それに対する費用は、配線コードのカバーの単価はたかだか100円でした。それを差し引いて費用対効果はこうなりますと、小学校の算数のレベルの計算で十分です。これなら誰にでもできます。
こうした身近なカイゼンは“業務改善”などという大袈裟なものではありません。いわゆる“創意工夫”の範疇です。
実際、こうしたカイゼンに対して報酬を出す制度は多くの企業も取り入れていますが、トヨタ自動車ではこれを「創意工夫提案制度」と呼んでいます。
個人で行う創意工夫でも会社規模になれば大きな効果をもたらします。トヨタ自動車の従業員は約8万人ですから、1人が1000円分のカイゼンをすれば、会社全体では8000万円の儲けになるというわけです。
私が取り組んだのは小さな創意工夫の延長でしたが、これをやり続けたことで、カイゼンのポイントを見つける目が養われていったのです。