新興国の政府としては、都市部を優先して発展させることで経済成長をスタートさせ、中間層の人口を増やすことで税収も増やしていこうという方針を立てることになります。すでに中国の都市部の人件費がかなり上昇したので、欧米などのグローバル企業は、「ネクスト・チャイナ」と呼ばれる国々(ベトナム、タイ、インドネシア)など、さらにはアフリカへと生産拠点を移そうとしていきます。

 こうした新興国では、相対的な低人件費を武器として、グローバル企業の工場や、グローバル企業向けの部品工場を呼び込むことで、雇用を拡大させようとします。進出する企業にとっても低コスト化のメリットがあり、新興国にとっても雇用の拡大、所得水準の上昇というメリットがあるということです。海外企業から見ると、生産面でのビジネスチャンスが訪れるということになります。

 生産活動が活発化していくと、都市型の消費者が増えて中流層を形成します。この層を対象にすることができれば、海外企業には消費のビジネスチャンスが訪れます。ただし、先進国の中流層よりも年収が少ないので、新興国向けの商品では、「段違いの安さ」を提供できる企業が有利になります。そうなるとグローバル企業は、先進国向け製品を転用するのではなく、現地子会社(や提携先企業)を通じて、「段違いの安さ」の製品を提供することが必要になります。また、その国でヒットした製品は、他の新興国にも展開していけます。

 2000年頃の中国は「世界の工場」と呼ばれ、各国の企業が工場を中国に建設して低コストの製品生産に活かしました。2010年以降の中国は「世界の消費市場」としての地位も築き、例えば2021年の乗用車の販売台数では中国は世界市場の38%を占めるほどの巨大市場になりました(日本自動車工業会データより)。他の新興国もこのような順序で経済発展をしていくと考えられます。