かつて「世界の工場」と呼ばれた中国に続き、グローバル企業の工場がベトナム、タイ、インドネシアに進出している。生産活動が活発化するにつれて所得水準があがり、こうした「ネクスト・チャイナ」諸国にも中流層が現れた。彼らに向けて、日本は何を売っていけばいいのだろうか。※本稿は、岸本義之『グローバル メガトレンド10 社会課題にビジネスチャンスを探る105の視点』(BOW&PARTNERS)の一部を抜粋・編集したものです。
新興国の所得格差は
今後どう進展していくのか
新興国の人々が海外や大都市に移動しようとする理由は、より高い所得が得られそうだと考えるからです。新興国では特に農村部に低所得の人が多くいます。農村では食費や生活費がそれほどかからないので、都市部よりは低所得でも生活できるのですが、生活がままならないレベルの低所得の人も多くいます。
最も所得格差が大きいのは南アフリカ諸国で、ブラジル、メキシコなどの中南米諸国が続きます。逆に所得格差が小さいのは北欧、東欧で、西欧とカナダなどが続きます。アメリカは格差がやや大きい方の国、日本や中国は格差がやや小さい方の国ということになります。やはり新興国の方が、所得格差が大きいという状況にあります。
所得格差は、新興国と先進国では異なる形で進展しています。新興国では、大多数を占める農村生活者(経済統計上は貧困層に分類される人が多い)が、都市生活者に転じて、徐々に所得を高めています。今後は中流層の人口拡大と、底辺層の水準向上が期待されています。
一方の先進国では、ごく一握りの「成功者」に富が集中し、その一方で失業率が上昇すると、都市生活者の中の貧困者の数が拡大します。
そして、「起業長者」などの経済的成功によって、さらに格差が広がっていくことが懸念されています。
所得格差が今後どうなるかというと、新興国の経済水準の向上に伴い、中流層が大きく増加すると見込まれています。2007年に貧困層と飢餓層の合計が46億人もいたのに対して、2030年予測では33億人に減少し、中流層は18億人から44億人に増加すると予測されています。つまり、世界全体でみると、飢餓層・貧困層が減り、中流層が増加するということなので、格差問題は次第に改善の方向に向かうということです。