巷では「DX」「DX」の大合唱が呪文のように続いています。しかし現場からは、「仕事が増えただけで売上はなかなか上がらない」という悲鳴が聞こえてきます。そんな悲劇を解決すべく、1000社以上の問題を解決してきたITコンサルタント・今木智隆氏が書き下ろしたのが『DX沼からの脱出大作戦』(ダイヤモンド社)です。本連載では、さまざまなデジタルの「あるある」失敗事例を挙げながら、なぜそうなってしまうのか、どうしたら問題を解決できるのかをわかりやすく丁寧に解説していきます。ECサイトやSNSの運営に携わっている現場の方、デジタル広告やデジタルマーケティングに関わっている現場の方はぜひご一読ください。
周りにいる数人が同じことを言うと、それが真実だと思い込んでしまう
会議では往々にして、地位が高くて声の大きい人の意見が通りがちです。
ある商品のCM曲やナレーターを決める会議で、「俺の周りでは3人が3人とも○○が人気だと言っている。世間的にも絶対に人気だ」と主張している人がいて、呆れたことがありました。このCMはF1層(20~34歳の女性)が対象であったにもかかわらず、この50代の男性は自分の周りの意見だけで、曲やナレーターを決めようとしていたのです。人間誰しも身の回りにいる数人が同じことを言っていると、それが真実だと勘違いしてしまいますが、そんな思い込みに陥らないよう普段から自分を戒めておく必要があります。
サンプル数が300あっても意味のないデータはいくらでもあるのに、それがサンプル数3ですからね。
もっと酷い人になると、サンプル数1=「俺」で判断しようとします。
かつて、私はある企業サイトのトップページに関する会議に出席したことがありました。トップページに配置された部門はアクセス数が増えて業績を上げやすくなりますから、どの部門長も自部門を有利な位置に配置しようと必死です。「うちの部門は売上が一番大きいのだから、一番面積のいいところになって当然」という主張はまだ可愛い方。ある部門長は「俺はいつもサイトの右を見るから、うちを右に置け」と言い出しました。あまりにも非科学的な主張が出てくると、会議もわけのわからない方向に向かってしまい、大混乱です。
大きな組織になるほど人間関係の忖度が入り込んで、消費者にとってどんな利益があるのかはそっちのけになってしまいます。
※本稿は『DX沼からの脱出大作戦』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。