そのとき、敵が狙撃してきて、真ん中で歩いている人の頭にボーンと弾が当たった。そうしたら、その人が「まるっきり」とひと言言って、死んだ。実は軍隊の中で「まるっきり」という言葉が流行っていたらしいんです。その人の頭へボーンと弾が当たった途端に、「まるっきり」と言って死んだ。これって、不謹慎かもしれませんが、おかしいじゃないですか。
人間は、どこかに滑稽さを抱えて生まれてきているんですね。おかしなことをしたり、おかしなことを言われたりというのも、これも一つの生きていくプロセスとして、すごく大事な気がします。
要するに我々は、何で生まれてきたかというと、遊ぶために生まれてきたんです。仕事をするために生まれてきたんじゃないんです。
横尾忠則 著
仕事でも、その仕事に遊びの要素がないと意味がないわけです。そういう意味で、すべては遊びのために生まれてきていると考えれば、人生はもっと面白いかもわからない。死ぬことだって、遊びのために死んだっていいわけですから。
だから、生まれてきた以上、できるだけ楽しむというのが大事です。
三島由紀夫さんが市ヶ谷の自衛隊のバルコニーに隊員を集めて、まるで演劇のような空間を設定しました。僕には究極の遊びに思えました。人生をドラマに仕立てた演劇的遊びです。三島さんの個人的な生活の中で、僕はいつも三島さんの一挙手一投足に遊びの精神を見てきました。だから、あの人騒がせな演劇的なパフォーマンスも遊びに見えたのです。死さえ遊びにすることで死を超克したのではないでしょうか。