一方、杉谷氏は業務で米国を訪れた際、米国のビジネスパーソンが欠かさず相槌を打つことに少々驚かされたという。

「米国に行って『なるほど』と感じたものに、相槌があります。米国の営業担当者は、例えば『Absolutely(まさに!)』や『Exactly(その通り!)』といった形でパターンを変えながら、相手の話へ絶対に相槌を打つのです」

 相槌が便利なのは、そこまで専門的なスキルを必要としないことだ。ただし、取引先の話を聞きながら、「次は何を切り出そうかな」「どんな提案につなげようかな」などと頭を巡らせているうちに、自然と忘れてしまいがちな“盲点”でもある。

 そんな些細な動作だからこそ、日頃から意識できるかが成否を分ける。

「『なるほど』『そうなんですね』『面白いですね』でも十分ですし、『はい』と返すだけでも違います。それだけで相手は話しやすくなるはずです」(杉谷氏)

「客ウケが良い」雑談術
「情報のたらい回し」とは?

 ここまで紹介してきた相槌の打ち方は、いわば営業で習慣にするべきテクニックの基礎編だ。ここからは、シンプルながらも意外と難しい応用編をお伝えする。

 それは「情報のたらい回し」である。

 情報のたらい回しとは、ある顧客のところでヒアリングした内容を、別の顧客との商談で披露するというテクニックだ。この際、単に情報を右から左に流すのではなく、自分なりにかみ砕きながら勉強し、さまざまな情報をミックスするのがポイントだ。相手に情報通だと思われ、本音や課題感を引き出しやすくする効果がある。

 例えば、自動車業界のA社で聞いた話があったとしよう。次に食品業界のB社へ行った際に、その内容を「自動車業界では○○という課題があり、××といった形で対策を進めているようです。貴社や食品業界でも同様の課題がありませんか」といった形でぶつけてみる。

 すると、B社の社員は「別業界の裏事情」を詳しく知っている営業担当者の情報量に信頼を寄せ、「実はウチでは、省人化が遅れ気味なんですよね…」などと具体的な課題を話しやすくなるというわけだ。
 
「今日は暑いですね」「きれいなオフィスですね」といった、無難なアイスブレイク(場の空気をほぐすための雑談)よりも使えるのは間違いない。

 ただし、この「情報のたらい回し」も、営業担当者が会話の主導権を握るためではなく、あくまで取引先の話を聞きだすための布石として使うことが重要だ。

 一方的にまくしたてるような営業をしていては、限られた時間内で相手と信頼関係を築くのは難しい。その観点からも、いかに相手を巻き込み、気持ち良く話してもらえる環境を構築できるかがカギとなる。ぜひ、日々の商談で試していただきたい。

 今回は、営業に求められる聴く力を高めるためのテクニックを紹介してきた。「学びの動画」の特集『キーエンス流 営業・企画・戦略の強化書』ではこの他にも、キーエンスOBが古巣で学んだビジネスの極意を余すところなく紹介している。本記事で興味を持った方は視聴してみてほしい。